研究課題/領域番号 |
20K15046
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
篠原 百合 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30755864)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルテンサイト / 鉄鋼材料 / バリアント結合則 |
研究実績の概要 |
本課題では鉄合金のバリアント結合則(以下,結合則)を明らかにするために,変形の連続条件(Rank-1接続)を軸としてバリアントペアの形成優先度を予測する手法を確立する. 本年度は,レンズマルテンサイトについて結合則と結合形態を調査した.まず,レンズマルテンサイトで形成されうる全てのバリアントペア(552種)の結合面について,結合時に要請される不変面条件からの偏差を評価した.また,Fe-Ni-C合金を2種類の温度(77Kとマルテンサイト変態開始温度直下)でサブゼロ処理した試料についてバリアントペアの結合頻度を計測した.その結果,いずれの試料でも不変面条件からの偏差が小さな3種類のペアが全体の70%以上を占め,高頻度に形成されることが明らかになった.また,従来の報告にもある通り同一晶癖面グループに属するバリアントが密集して形成する様子が観察された.以上の観察結果と晶癖面と結合面の幾何的関係から,形成が可能なバリアントペアの形状と,それらの組み合わせで構成されるバリアントクラスタの三次元形状を考察した.同一晶癖面グループのバリアントから構成されるダイアモンドクラスタについて解析を行ったところ,バリアントペアが単体で形成するときと比較してRank-1接続で要請される回転角の大きいことが判明した.よって,このクラスタの形成はRank-1接続の観点から不利であると考えられる.実際に,ダイアモンドクラスタが二次元で観察可能な母相の<001>からEBSD測定を行ったが,形成は確認できなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
バリアントクラスタを構成するバリアントの組み合わせは膨大であるが,その三次元形状について候補を絞り込めた点で,進捗があったといえる.得られた情報は実際の組織から三次元像を構築するときの大きな手掛かりになると考えられる.また,バリアントペアの種類と個数を自動判別するプログラムを構築できたことから,解析の効率化が見込めるため「想定以上に進展した」と判断とした.
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今後の研究の推進方策 |
薄板状マルテンサイトのバリアント結合則の解明,およびシリアルセクショニング法によりバリアントの三次元形状を観察することを予定している.現在,観察に適した母相粒径・マルテンサイトの体積分率を有する試料を準備中である.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が不要であったため.また当初購入を予定していた,解析用PCの購入を次年度に見送ったため.
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