研究課題/領域番号 |
20K15046
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
篠原 百合 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (30755864)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルテンサイト / 鉄鋼材料 / バリアント結合則 |
研究実績の概要 |
本課題では鉄合金のバリアント結合則(以下,結合則)を明らかにするために,変形の連続条件(rank-1接続)を軸としてバリアントペアの形成優先度を予測する手法を確立する.レンズマルテンサイトのミドリブや薄板状マルテンサイトの結晶学は,晶癖面における不変面条件で説明できることが知られている.しかしrank-1接続の観点からは,バリアント同士が結合するときに,結合面において不変面条件からの偏差が生じる. 前年度は,レンズマルテンサイトについて不変面条件からの偏差と結合頻度の関係を調査した.本年度は薄板状マルテンサイトが形成するFe-Ni-C合金について,旧γ粒内におけるバリアント結合傾向の二次元解析とシリアルセクショニングを行った. 解析の結果,結合面に生じる不変面条件からの偏差が小さなペア(3種類)が高頻度に形成されることが明らかになった.これはレンズマルテンサイトの場合と同様の結果である.EBSDの測定データを用いて,バリアントペアの内部に存在する不変面条件からの偏差を可視化した.偏差は二つのバリアントの結合面付近で最大となり,結合面から離れると減少した.偏差によって生じる回転軸と回転量はrank-1接続から要請される理論値とほぼ一致した. シリアルセクショニングに適切なγ粒径,マルテンサイト体積分率を有する試料の作製方法を探索の後,シリアルセクショニング-光学顕微鏡法によりスライス画像を取得した.観察領域は500μm×300μm×100μmである. 三次元像の構築には光学顕微鏡写真に対して,バリアントの同定及びバリアント毎に色を塗り分ける必要がある.そのため現在効率化を図るべく,塗分けを支援するプログラムを作成中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリアルセクショニングについて,バリアントを明瞭にエッチングするための研磨条件と,旧オーステナイト粒界を同定するための研磨条件が異なることが判明した.よって条件探索及びセクショニング像取得に当初想定していたよりも時間がかかった.しかし,光顕写真からバリアントの種類を同定するプログラムを作成することにより,三次元像構築の効率化が期待できるため「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
薄板状マルテンサイトについて,粒界を跨ぐように発生するバリアントペアの結合則の解明を予定している.現在,三次元解析の準備中である.また,本年度取得したシリアルセクショニング像の三次元像も構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた国際および国内学会がオンラインに開催になり,旅費が必要なくなったため.差額分は次年度開催予定の国際学会(現状対面開催)に使用予定である.
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