本課題では鉄合金のバリアント結合則(以下,結合則)を明らかにするために,変形の連続条件(rank-1接続)を軸としてバリアントペアの形成優先度を予測する手法を確立する.前年度はシリアルセクショニング+EBSDで得られたデータから三次元像構築を行ったが,セクショニング(FIB加工)の際生じた加工痕が,ノイズとなり解析を困難にしているという課題があった.今年度は,ノイズの低減方法の検討および,Σ3粒界で形成するバリアントペアの解析を行った. 加工痕に由来するEBSDデータ上の未解析点は,加工方向と平行に一方向で導入される.よって,特定の方向の情報を取り出す画像処理(微分フィルタ)および前後のスライスの情報を利用することでノイズを低減した.また,FIB加工によりマルテンサイトが誘起されることも判明したが,このマルテンサイトは母相との界面が湾曲しているため,FIB加工前から試料内に存在したマルテンサイトとは区別が可能であった. 粒界面が(111)γのΣ3粒界で観察されたマルテンサイトについては,バリアントペアが粒界を跨ぐように形成しており,バリアントペアの結合面は粒界と平行であった.rank-1接続に基づく理論解析から,形成していたペアはいずれも理論上の結合面が(111)γで,かつ,結合面に生じる不変面条件からの偏差が小さな二種類(I型,II型)のみであることが判明した.よって,粒内のバリアントペアと同様にΣ3粒界で優先的に形成するバリアントペアの形態もrank-1接続により説明できると考えられる.I型のペアは,double K-S関係の観点からも形成に有利な形態である一方,II型のペアはdouble K-Sの関係からは形成が説明できなかった.
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