研究課題
若手研究
準安定オーステナイト鋼であるFe-18Cr-8Ni合金(SUS304)の焼入れマルテンサイトおよび加工誘起マルテンサイトの組織、硬さ、転位密度を比較し、高密度の転位を有する加工オーステナイトから変態する加工誘起マルテンサイトのほうが、転位密度と硬さがともに高いことを明らかにした。一方で、転位の成分(刃状転位またはらせん転位)や分布状態は加工誘起マルテンサイトと焼入れマルテンサイトを圧延したものでほとんど変わらなかった。
鉄鋼材料の組織制御
本研究は、高強度鋼として一般的に用いられる焼入れマルテンサイトと、TRIP鋼などで用いられる加工誘起マルテンサイトの強度と組織を比較したものである。従来、これら2つの組織の特性の違いが評価された例はなく、加工誘起マルテンサイトのほうが転位密度および硬さが高いという新たな知見が得られた。より高強度な鉄鋼材料を作製する上で、加工誘起マルテンサイトの利用価値が高いという結果は、工業的に大きな意義があると考えられる。