研究課題/領域番号 |
20K15054
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
池田 亜矢子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 研究員 (40746666)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多元状態図 / コンビナトリアル手法 / ビッグデータ / 拡散対法 |
研究実績の概要 |
本年度はNi-Co-Al-Ti四元系状態図の作成に取り組み、使用する組成傾斜材の設計、作製手法の開発を実施し、予備実験を行った。この系ではCoおよびNiの拡散がAl,Tiに比べて格段に遅いため、はじめにCo,Niの組成傾斜を導入し、次にAl,Tiの組成傾斜を導入する手法、すなわち、2組の拡散対をさらに接合して拡散させる多段拡散対法を用い、ターゲットとなるNiCo基タービンディスク材(TMW-4M3)近傍組成を含む広い組成範囲を網羅する組成傾斜材を作製することに成功した。組成傾斜は約 2 mm x 2 mm の範囲で導入された。900℃での局所平衡状態を凍結した後、この試料中の600組成以上の微小領域の分析を行い、900℃におけるそれぞれの組成の安定相を確定した。この実験結果と商用計算状態図ソフトウエア(Thermo-Calc)から予測された状態図を比較すると、実験結果による状態図の方が高Co濃度側でγ相のAlおよびTiの固溶限が大きいことが明らかになった。 さらに、より多くの温度条件で試験ができるように、金太郎アメ形状の多段拡散対試料の作製手法を確立した。これは、まずカマボコ形状の合金同士を組合わせた円柱状の拡散対を2組作製し、次にそれぞれの拡散対をカマボコ形状に切り出したものを組合わせ、円柱状の多段拡散対を作製する手法である。金太郎アメ形状拡散対からは長手方向に垂直に切断することによって、ディスク形状の試料を多数得ることができる。合金同士の接合には放電プラズマ焼結法(SPS)を用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ターゲットとするγ-γ'二相域を網羅する組成傾斜を導入することに成功し、当初予定していたより少ない試料数で四元状態図の作成に十分な数の相境界組成データセットを得る目処が立ったため。
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今後の研究の推進方策 |
ターゲット材料の周辺組成における熱力学データを収集するフレームワークを確立し、効率良く合金組成、熱処理プロセスを最適化するための仕組みをつくることを目指し、以下の方針で研究を進める。 ・確立した実験手法を用いて、実際にターゲットとするγ-γ'二相域周辺の四元状態図を複数の温度条件で完成させる。 ・TMW-4M3と同等のCr濃度の擬四元におけるγ-γ'二相域を明らかにする。 ・TMW-4M3合金と固溶強化元素であるW, Mo, Ta, Nb粉末を焼結し、ミクロ拡散対を作製し、固溶強化元素の固溶限を確定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響で、予定していた学会参加を取りやめたため。
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