研究実績の概要 |
自動車や建設機械等の部品に使用される炭素鋼中の微細析出物は結晶粒組織制御に不可欠であり、これらの析出メカニズム解明が、熱処理プロセスや組成の最適化において重要である。そこで本研究では、炭素鋼における複数種類の微細析出物の析出メカニズムを詳細に解明し、熱処理プロセスおよび材料組成の最適化による炭素鋼の自在な結晶粒組織制御を目的とした。2020年度は、AlとNb、Nを添加した鋼を1250℃で1時間保持し析出物を鋼中に固溶させた後、水冷及び20℃/min、4℃/min、0.7℃/minの冷却速度で室温まで炉冷し、析出物を調査した。次に、これらの試料を1070℃で3時間焼ならし後、20℃/minで室温まで炉冷し、析出物を調査した。そして、試料を1050℃で5時間のオーステナイト化後に水冷した。
1250℃保持後に水冷した試料をTEM観察した結果、AlNやNb(C,N)は観察されなかった。1250℃から20℃/minで冷却した場合、微細なNb(C,N)の析出が認められ、AlNは析出しなかった。冷却速度4℃/minでは、単独のNb(C,N)に加えて、Nb(C,N)と複合化したAlNが少量析出した。冷却速度を0.7℃/minまで遅くすると、AlN-Nb(C,N)複合粒子が粗大に析出した。これらの材料を1070℃で焼ならすと、いずれの冷却条件でもAlN-Nb(C,N)複合粒子が多く析出した。これらの結果から、先に析出したNb(C,N)粒子が、その後のAlN析出の核形成サイトとなることが明らかとなった。さらに、AlN-Nb(C,N)複合粒子は高い整合性を有する界面を形成しており、このためAlNとNb(C,N)が複合化しやすい可能性が示された。1250℃からの冷却速度が早いほど、焼ならし過程で過飽和固溶していた析出物が微細に析出し、オーステナイト化後の結晶粒組織が微細化することがわかった。
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