研究課題/領域番号 |
20K15056
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 宏輝 東北大学, 工学研究科, 助教 (20869648)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コールドスプレー法 / 固相接合 / 異種材料 / 低温プラズマ / 表面酸化皮膜 |
研究実績の概要 |
コールドスプレー法は固相金属粒子の衝突のみによって皮膜・堆積物を製作することができるため,加熱によって金属を液相化する工程を必要とする鋳物や接合などの従来法と比較して,桁違いに低いエネルギーで材料部材を生成するポテンシャルをもっている.コールドスプレー法による成膜は,金属基材・粒子表面に存在する表面酸化皮膜の破壊および新生面の接触が重要であるが,他固相接合法では異種材料の組み合わせ次第で酸化皮膜の存在により接合が促進される可能性について報告がなされている.本研究では,異種材料固相接合の鍵となる接合界面酸化皮膜の本質的役割を明らかにし,接合に適した酸化皮膜状態をつくることで,多様な異種材料の接合を実現する先進的なコールドスプレー技術を開発することを目的としている. 2020年度は,金属基材表面酸化皮膜を一部除去する方法として大気圧低温プラズマの利用を試み,プラズマ照射条件およびコールドスプレー条件について検討した.プラズマガスにアルゴン/水素混合ガスを用いることで,銅粒子/銅基材および銅粒子/アルミ基材を用いた成膜に対して,粒子の付着効率および接合界面密着性は顕著に向上する傾向がみられ,金属コールドスプレー法の前処理としての低温プラズマ処理の有効性を見出した.SEM観察と表面粗さ計測結果から,低温プラズマを用いた前処理は基材に熱影響やダメージがほとんどないことが確認され,これまで提案されているレーザーによる前処理等と異なり,多様な材料に適用可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はコールドスプレー法による金属固相接合におよぼす表面酸化皮膜の影響を明らかにするため,熱影響や放電損傷のない低温プラズマを利用したコールドスプレー実験系を構築した.当初の計画通り,銅・アルミを対象とした実験を遂行することができ,表面酸化皮膜の一部除去により接合界面密着性が向上する結果が得られた.この結果より,金属コールドスプレー法の前処理としての低温プラズマ照射の有効性が示唆され,接合に適した酸化皮膜状態をつくることの重要性が明確になった.この成果は計画より前倒しで国際会議公表を予定しており,次年度の研究項目である粒子衝突過程のモデリングも予定通り進んでいる.上記の理由より,本研究課題の進捗はおおむね順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は実験観測が容易ではない金属粒子の衝突から付着に至る過程,特に固相接合界面での挙動を明らかにするため,表面酸化皮膜の影響を考慮可能かつ多粒子衝突を扱える粒子衝突数値シミュレーションモデルを構築する.また,実験観察可能な接合粒子の様子や接合界面組織の分析結果と数値シミュレーション結果の比較・検討から,異種材料接合の可否を左右する要因を明らかにし,材料によって異なると予想される適切な成膜条件に対する指針を得る.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により,当初オンサイト開催予定であった学会等に参加することができなかったために使用計画と差が生じた.これらの費用は感染症収束後の成果公表に関わる出張・滞在費として使用する.
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