コールドスプレー法は固相金属粒子の衝突のみによって皮膜・堆積物を製作できるため,鋳物や溶接のように金属を液相化する工程を必要とせず,材料部材を高速に接合・造形するポテンシャルをもっている.コールドスプレー法による金属基材上への金属成膜では,基材・粒子表面に存在する表面酸化皮膜の破壊および金属新生面の接触が接合原理の一つとして提案されている.一方で,他固相接合法では材料の組み合わせ次第で酸化皮膜の存在により接合が促進される可能性について報告がなされており,接合に及ぼす酸化皮膜の影響の理解は不十分である.そこで本研究では,材料の固相接合の鍵となる接合界面酸化皮膜に着目し,特に接合に及ぼす酸化皮膜厚さの影響を明らかにすることで,多様な異種材料の接合を実現する先進的なコールドスプレー技術を開発することを目的とした.最終年度は大気圧低温プラズマを用いた酸化皮膜除去技術により,基材表面に存在する酸化皮膜厚さをnmオーダーで調整し,固相衝突粒子の接合挙動に及ぼす酸化皮膜の影響の定量評価を試みた.金属基材上への金属粒子の接合では,低温プラズマによるプロセス時間に比例して固相接合に至る粒子数も増加し,接合前の酸化皮膜の除去は接合を顕著に促進することが明らかとなった.また,連続電気化学還元法を用いた酸化皮膜厚さの計測を行い,酸化皮膜を除去した金属表面は大気圧環境において10秒未満の時間で再酸化を生じることがわかった.これらの結果から,コールドスプレー法による金属材料の成膜では酸化皮膜除去直後の成膜が重要であることを示し,これを実現する手法の一つとして低温プラズマの利用の有効性を明らかにした.
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