研究課題/領域番号 |
20K15058
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
豊田 耕平 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (40740212)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 光の角運動量 / ソフトマテリアル / 光渦 / 非線形光学 / 応用物理 |
研究実績の概要 |
光渦は軌道角運動量と呼ばれる回転方向の輻射力をもつ光である。近年、光渦の有する軌道角運動量が物質に転写されることで、ねじれを持った構造体を物体上に形成できることが明らかになり注目を集めている。本研究では、光渦を用いて、代表的なソフトマテリアルであるハイドロゲルの内部にねじれ構造を持ったカイラル構造体を形成することで、後天的に光学性質、力学物性をコントロールできるカイラルソフトデバイスの創成を目的とする。塩化金水溶液にハイドロゲルを浸漬させることで、金イオンを添加した。波長変換によって得られた波長532 nmのピコ秒短パルスレーザーをハイドロゲルに集光した。 光渦の周期的境界条件に基づく量子数をトポロジカルチャージ(L)と呼ぶ。Lの値と形成されるカイラル構造体の関係を評価した。L = 1の時、光の集光点より先、二つに分岐しながらねじれ構造を有するワイヤーを形成した。また、このねじれの方向はL = -1のとき反時計回りを示し、Lの正負によってねじれの方向を制御できることを明らかにした。 さらに、L = 2のとき、ねじれ構造は3本に分岐した。また、塩化金(Ⅲ)水溶液、および金イオン無添加ハイドロゲルではフィラメント形状を形成しなかったことから、これらの現象はハイドロゲル内部に金イオンが添加されているという条件下でしか生じないことが明らかとなった。また金イオン添加濃度を上げることによってワイヤーの長さや太さが向上することも明らかとなった。 また光の入力強度や光渦のトポロジカルチャージ、金イオン濃度をパラメータとする数値計算によって、ハイドロゲル内部のカイラル構造体が光の導波路形状と依存していることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PEGDAを塩化金水溶液に浸すことによって金イオン添加ハイドロゲルを作製した。光渦ピコ秒レーザーを集光することで導波路として金ナノツイストワイヤーが析出する。このワイヤーのねじれの向き、方向は光渦のトポロジカルチャージの正負、そして大きさに依存していることを明らかにした。出来上がった構造体は光学顕微鏡、またレーザー共焦点顕微鏡によって観察した。また、光の入力強度や光渦のトポロジカルチャージ、金イオン濃度をパラメータとする数値計算によってカイラル構造体の理論解析を行った。これらは本年度の目標であったカイラル構造体の形成、物理パラメータの計測、そして構造体形成の理論数値解析に該当する。
|
今後の研究の推進方策 |
トポロジカルチャージの違いによるカイラル構造体の形状をより詳細に評価する。 さらに金イオンのみではなく、別の金属イオンを添加したハイドロゲルにおいても構造体形成を行い、ワイヤーの構造評価、および光学的性質の評価を行う。
|