Mgは次世代の金属材料として期待されているが,腐食しやすく燃え易い.これを克服するために,表面処理により Mg基材を防食皮膜で覆い,耐食性を向上させる必要がある.本研究では,水と生分解性ポリマーの混合液を微粒化し,Mg合金表面に高速噴射することによって,有機-無機複合皮膜を形成する技術の開発を目的とし,以下の研究を行った.まず,(1)水と生分解性ポリマーの混合液と Mgの反応により,Mg基板表面に有機-無機複合被膜の形成が可能か検討した.次に (2)溶液の微粒化・高速噴射システムを作製した. 研究項目(1)では,皮膜生成方法として,Mg基板に対して水熱合成法を用いた.防食皮膜に含有させる有機物は,L-アスパラギン酸(LASP)を選択した.LASPを,被膜の主成分であるMg(OH)2の原料である水に溶解させるために,水,アセトン,LASPとを混合した溶液を調製した.その結果,LASPを添加した溶液で処理した試料では,LASPに含まれる窒素(N)が検出された一方,添加していない試料ではNは検出されなかった.この結果から,Mg基板表面には,有機-無機複合被膜が形成されたと考えられる. 研究項目(2)では,2種の処理装置を試作した.1つ目は,容器内で高圧蒸気を発生させ,容器内が所定温度に達して高圧状態となった時,容器に取り付けたバルブを開放することで,ラバルノズルを通じて高速噴射する仕組みである.本装置を使った実験では,圧力・温度ともに十分な高さに至らなかったため,まだ検討が必要である.2つ目は,電気炉内に Mg基板を設置し,基板自体に熱エネルギーを与えておき,そこに微粒化した溶液を噴霧して金属基板との反応を促す装置である.今回は,ひとまず Mg基板と水のみの反応が生じるかを検証した.その結果,Mg基板には,被膜成分と考えられる化合物が検出された.
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