研究課題/領域番号 |
20K15065
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
森 真奈美 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (80731512)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 塑性加工 / ラインプロファイル解析 / 耐食性 / 組織解析 / 機械的特性 |
研究実績の概要 |
本研究では、人工股関節や脊椎固定ロッド等に用いられる生体用Co-Cr-Mo合金の耐食性と生体適合性に及ぼす塑性加工の影響を定量的な組織解析を用いて明らかにし、長期間の使用に耐えうる高い信頼性を得るための指針を確立することを目的としている。 2020年度は、主に試料作製を中心に行った。本研究では、微量の窒素を添加し、fcc構造のγ相を安定化させたCo-28Cr-6Mo (mass%)合金を用い、熱間鍛造・圧延を用いて作製したφ14 mmの丸棒材を作製さらに冷間スウェージ加工と焼鈍を繰り返し行い、丸棒材を作製した。さらに、1000 ℃、1100 ℃、1150 ℃にて熱間溝ロール圧延し、φ6 mmの丸棒材を作製した。作製した試料の組織は走査型電子顕微鏡、電子線マイクロアナライザ、電子線後方散乱回折を用いて調査した。さらに、各試料の機械的特性を室温引張試験により評価した。その結果、いずれの丸棒材もASTM F1537規格値の2倍以上となる高強度を示し、熱間溝ロール加工により著しい高強度化が可能であることがわかった。さらに、これらの試料の組織観察を行ったところ、加工温度の違いにより粒径が異なるγ単相組織が形成されるとともに、一部の試料では析出物が形成していることが明らかとなった。以上のように、本年度は熱間溝ロール加工により高強度かつ組織の異なる試料作製に成功したことから、次年度以降はこれらの試料を用いてイオン溶出試験および電気化学インピーダンス測定等を行うとともに、中性子回折を用いた定量組織解析を組み合わせ、塑性加工による組織変化と腐食速度や不動態化挙動との関係を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染拡大の影響で試料作製がやや遅れたものの、特性評価用試料作製のための熱間溝ロール圧延条件を選定することができた。また、作製した試料の機械的特性評価及び電子顕微鏡を用いた組織解析も実施できたことから、当初の計画に沿って概ね順調に研究を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に作製した試料を対象に、中性子回折測定を用いた定量組織解析や耐食性・生体適合性の評価を実施する予定である。中性子回折測定はJ-PARCのiMATERIA(BL20)にて実施し、回折データから相分率と結晶方位分布をReitveld Texture解析、転位密度をラインプロファイル解析によりそれぞれ定量化する。さらに、引張変形によりひずみ量を変化させた試料を作製し、デジタル画像相関法により決定した表面のひずみ分布と耐食性の関係についても調査を行う予定である。耐食性評価は生体擬似溶液中にて浸漬試験とアノード分極試験を行い、腐食速度と不動態化挙動を評価する予定である。さらに、電気化学インピーダンス測定およびX線光電子分光により試料表面に形成する不動態皮膜の緻密性や組成、化学状態を調査する。生体適合性の評価は国際共同研究として骨芽細胞を用いた細胞毒性試験により評価する。 上記結果を踏まえ、組織、機械的特性、耐食性・生体適合性の関係を定量的かつ系統的に明らかにし、組織・特性制御指針の構築とプロセス最適化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、参加予定だった学会や研究打ち合わせ等の中止・延期やオンライン開催に変更されたため、旅費が不要になる等して未使用額が発生した。 当該年度に発生した未使用額は、計画を一部変更してオンライン開催される学会や打ち合わせに使用するパソコン等の環境整備に使用するとともに、翌年度に実施する耐食性評価にて使用する試薬の購入、生体適合性の評価で使用する骨芽細胞等の購入および組織観察にて使用する研磨材等の消耗品を購入する予定である。
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