研究課題
本研究では、人工股関節や脊椎固定ロッド等に用いられる生体用Co-Cr-Mo合金の耐食性と生体適合性に及ぼす塑性加工の影響を定量的な組織解析を基に明らかにし、長期間の使用に耐え得る高い信頼性を得るための指針を確立することを目的としている。2023年度は、2020年度に作製した微量の窒素を添加してfcc構造のγ相を安定化させたCo-28Cr-6Mo (mass%)合金を異なる条件にて熱間溝ロール圧延及び冷間スウェージ加工を行って作製した試料を対象に、生体擬似溶液中にて浸漬試験とアノード分極試験を行い、腐食速度と不動態化挙動を評価した。また、電気化学インピーダンス測定およびX線光電子分光を用いて試料表面の不動態皮膜の構造、組成・化学状態を調査した。その結果、先行研究では鉄鋼材料において塑性加工によって導入される格子欠陥が耐食性を低下させることが報告されているが、本合金では格子欠陥の導入による耐食性の低下は起こらないことを明らかにした。また、電気化学インピーダンス測定では焼鈍材よりも加工材の方が早く不動態化し、本合金では格子欠陥の導入により不動態皮膜の形成が促進されることが示唆され、材料開発に有用な知見を得ることができた。以上のように、本研究では、生体用Co-Cr-Mo合金の組織、機械的特性、耐食性・生体適合性の関係を定量的かつ系統的に明らかにし、組織・特性の制御指針とプロセス最適化の指針を確立することができた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
Materials Research Letters
巻: 12 ページ: 1-9
10.1080/21663831.2023.2281593
High Temperature Materials and Processes
巻: 42 ページ: 20220278
10.1515/htmp-2022-0278