本研究では生体用Co-Cr-Mo合金を対象とし、人体に対してより安全なインプラントの創製に向けた材料学的知見を得ることを目的としている。この目的を達成するため、塑性加工による組織変化が耐食性や生体適合性に及ぼす影響を調査した。その結果、冷間加工により骨芽細胞と合金表面の密着性が向上することを見出し、中性子回折を用いた組織定量化を基に加工誘起マルテンサイト変態と結晶配向の先鋭化がその要因であることを明らかにした。また、熱間加工による生体適合性の低下が起こらないことを確認した。以上より、高強度と優れた生体適合性の両立を目的とした組織制御指針の確立に有用な知見が得られた。
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