研究課題/領域番号 |
20K15069
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
LU XIN 東北大学, 工学研究科, 助教 (00781452)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電気化学 / 溶融塩 / ネオジウム磁石 / リサイクル / 電析 |
研究実績の概要 |
Nd-Fe液体合金を連続的に生成する電解プロセスの開発にとって、重要かつ不可欠なな電気化学情報を得るために、電気化学測定を行った。 (1)800℃において、溶融したLiClを電解浴として、典型的なNd磁石及びその主成分であるネオジウムと鉄のアノード分極曲線を測定した。結果として、鉄の溶解電位(-1.4V vs塩素基準電位)より、ネオジウムの溶解電位は、はるかに負の位置しており、-2.9V(塩素基準電位)であることを明らかにした。電位の差によって、ネオジウム磁石をリサイクルする時、ネオジウムは優先的に溶解することを示唆する。 (2)800℃において、溶融したLiClを電解浴とし、ネオジウムイオン及び鉄イオンの還元挙動に関してCV(サイクリックボルタンメトリー)やSWV(矩形波ボルタンメトリー)などを用いて分析した。溶融LiCl中の鉄イオンの還元電位は-1.4V(塩素基準電位)であることが分かった。ネオジウムイオンの還元反応は、Nd(III)+e→Nd(II)とNd(II)+2e→Ndの二段階反応であり、それぞれの還元電位は-2.4Vと-3.0V(塩素基準電位)であることが明らかになった。一方、フッ素イオン源として、溶融LiCl中にLiFを添加することによって、Nd(II)の反応が抑制され、Nd(III)の還元は一段階反応になる傾向があると確認できた。鉄イオンはネオジウムイオンより優先的に還元されるため、鉄イオンの供給速度を制御することによって、電解析出した生成物中の鉄の濃度の制御が可能であることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶融塩の精製などの実験技術の改善することによって、電気化学手段を用い、Nd-Fe液体合金の電解プロセスにとって重要な基礎データを得られた。こういった情報を用いて、来年度で実施するNd-Fe液体合金の連続電解実験が加速できると期待する。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は主に鉄イオンの連続供給によって、電解浴中の鉄イオン濃度を維持し、Nd-Fe液体合金の生成と組成制御を実施する。今年度で得られた基礎的な電気化学データに基づいて、電解条件、特に鉄の初期濃度及び添加速度を工夫し、液体合金を生成する最適電解条件を解明する。具体的に、鉄イオンの初期濃度が高すぎると、析出物中の鉄の濃度が高くなり、均一な合金組成が得られない。一方、鉄イオンの初期濃度が低すぎると、ネオジウムの析出が多く発生し、液体合金を生成できない。電解浴中の鉄イオンの還元速度に基づいて、より鉄イオンの初期濃度を正確的に制御することによって、Nd-Fe液体合金を析出し、更に鉄イオンの供給速度と析出した合金組成の関係を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大防止の関係で、2020年度対面の学会発表が実施しなかった。そのため、旅費として計上した経費は残った。また、溶融塩の精製技術の改善によって、NdCl3等の試薬の使用は大幅に低減できた。そのため、消耗品として計上した希土類試薬や電解浴試薬などの経費使用量も低減できた。その分について、来年度大型電解実験に使用する予定である。
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