研究課題/領域番号 |
20K15072
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
甘利 俊太朗 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30837737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 晶析 / 多成分結晶 / 環状分子 / 水和物 |
研究実績の概要 |
複数の分子から構成される多成分結晶は、単一成分の結晶ではみられない物性や機能を発現する。高品質な多成分結晶の粒子群を得るためには、その特徴に応じて晶析操作を適切に設計しなければならない。本研究課題では、所望の品質を有する多成分結晶の粒子群を製造するために求められる晶析操作の指針の獲得を目指している。 多成分結晶の粒子群の品質と晶析操作の関係を検討する上で、本研究では、大環状分子であるCucurbit[7]uril(CB[7])に着目した。CB[7]は環状構造内に様々な分子をゲスト分子として取り込み、包接化合物を形成する。さらに、CB[7]自体も水分子と共に多成分の固相として析出する。しかし、析出させた固相の多くはアモルファスであり、CB[7]を水溶液中から結晶粒子群として分離・精製することが困難であることが明らかになってきた。そこで、CB[7]と水から成るCB[7]水和物の結晶化条件を検討することで、包接化合物を含めた多成分結晶を粒子群として得るための晶析プロセスを設計する上で必要となる基礎的な知見が見出せると考えた。 初年度では、多成分結晶の晶析操作の獲得に向け、CB[7]水和物をモデル化合物とし、この結晶粒子群を得るための晶析操作を詳細に検討することとした。X線回折法と電子顕微鏡による観察結果より、晶析時の温度が低い時に析出する固相はアモルファスであるのに対して、温度が高い場合に析出する固相は明確な面を有する結晶粒子群であることが明らかになった。また、晶析操作だけでなく、固液分離時の操作条件もCB[7]水和物の結晶化の有無に影響していることも分かった。結果として、多成分結晶のひとつであるCB[7] 水和物を結晶粒子群として安定して製造するための晶析ならびに固液分離時の適切な操作条件を見出すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定していた実験系とは異なるものの、本研究課題で着目したCB[7]を用いて、多成分結晶である水和物結晶を安定に得るための晶析ならびに固液分離操作の指針を得ることができた。また、包接結晶粒子群の晶析操作の検討に向け、包接化合物の構築するCB[7]を分離・精製するための操作方法は、本研究課題を進める上でも重要な知見であり、現時点の成果は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により、CB[7] 水和物の結晶粒子群として安定して得るためには、溶媒であり、結晶化成分の1つである水が重要な役割を担っていることが明らかになりつつある。今後、膜晶析法や非溶媒添加晶析法を用いて、CB[7]水和物が析出する際の溶媒組成や溶液中の溶質濃度を変更し、析出する固相の品質への影響を明らかにする。 また、CB[7]水和物の実験系で得られた相図や晶析操作の知見を利用して、CB[7]-水の二成分系に対して、ゲスト分子を加えた三成分系での多成分結晶粒子群の品質と晶析操作との相関解明を目指す。
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