高品質な多成分結晶の粒子群を得るためには、その特徴に基づいた晶析操作の設計が必要である。本研究では、所望の特性を有する多成分結晶粒子群を製造するための晶析操作指針の獲得に向け、大環状分子であるCucurbit[7]uril(CB7)に着目した。CB7は様々な分子を包接するだけでなく、水などの溶媒分子と共に固化し、多成分の固相として析出する。一方、CB7は非晶質になりやすいことが報告されている。 そこで、本研究では、多成分結晶粒子群を得るための晶析操作を設計する上で基礎的な知見を獲得するため、多成分結晶のひとつで、包接化に利用可能なCB7水和物をモデル化合物として、晶析条件と得られる固相の特性の関係について明らかにすることを目指した。 初年度では、CB7と水から成るCB7水和物の結晶化条件を検討した結果、晶析時の温度や溶媒量が固相の特性に影響を及ぼすことを明らかにした。 そこで、最終年度では、医薬品製造で多用されているAnti-solvent添加晶析にて、CB7水和物の固相特性と晶析条件の関係を調査した。 その結果、Anti-solventの混合比に応じて、様々な形態の固相が析出した。特に、Anti-solvenの混合比が10%以下の条件で角や面のある結晶粒子群が観察され、混合比により析出するCB7水和物の固相の特性が大きく異なることを見出した。XRDやDLSで分析した結果、Anti-solventの混合比が10%以下の条件では、結晶特有の明確なピークや粒子成長が観察され、CB7水和物は相図上の限られた領域にて結晶粒子群として析出することが分かった。 以上より、包接化に利用可能なCB7水和物をモデル化合物として、多成分結晶の晶析条件と固相特性の関係を調査し、Anti-solvent添加晶析を用いて安定してCB7水和物を結晶粒子群として製造するための晶析条件を見出すことができた。
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