研究課題/領域番号 |
20K15078
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
坂部 淳一 中央大学, 理工学部, 助教 (70803287)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超臨界流体 / 拡散係数 / 推算モデル / 量子化学計算 / 金属錯体 |
研究実績の概要 |
本研究では、超臨界流体を用いた技術や材料開発において重要である物性値の測定と推算モデルの構築を目的としている。特に、超臨界二酸化炭素中の金属錯体の拡散係数に関する研究をおこなう。高温・低粘度域における拡散係数の測定をおこないその挙動を理解し、その領域で適用可能な拡散係数の推算モデルを構築することを目指す。既存のモデルは相関をおこなう際に、相関パラメータを物質や測定条件ごとにそれぞれ決定する必要がある。この際、相関に用いたフィッティングパラメータの条件や物質ごとの傾向は検討されていない。そこで、状態方程式から得られる平衡物性や量子化学計算から得られる分子情報(分子体積・表面積・表面電化分布)の関数としてパラメータを表現する。その結果、容易に入手可能な平衡物性や分子情報から決定したパラメータを用いて拡散係数が推算可能となる。実測値に相関していたこれまでのモデルとは全く異なり、実測値を必要としない新たな推算法となる。つまり、測定が困難な拡散係数を入手が容易な情報(平衡物性・分子情報)を利用して予測可能となる。 本年度は、70℃以上の高温領域における銅および白金錯体の拡散係数の実測をおこなった。これまでに報告例のない測定領域における拡散係数の実測値は非常に重要であり、その挙動の理解におおきく貢献した。また、実測データをもとにモデル化をおこなうため、超臨界二酸化炭素の粘度計算や分子情報を得るための量子化学計算を推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに報告例のない測定領域における、銅および白金金属錯体の拡散係数の実測に成功した。特に70℃以上の高温領域において、実測誤差の非常に小さい制度のよい測定に成功した。その結果から、高温領域における拡散係数はこれまでに報告されている相関式の傾向から大きく外れることが明らかになった。本研究の結果から、超臨界二酸化炭素中において拡散係数が大きく変化する領域(境界)が存在することが示唆された。これは、超臨界流体中におけるliquid or gas like領域での部分モル体積の変化やその境界において様々な物性値が極値を示す性質と同様であると考える。 これまでに報告されている拡散係数の実測値はほとんどすべてがliquid like領域のものであり、その領域で相関されていた式では、本研究の測定領域(gas like)を表現できないことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.超臨界二酸化炭素中における拡散係数の実測を継続する。金属錯体の種類や測定条件を拡張し、拡散係数の条件に対する依存性を理解しモデル化を目指す。測定条件としては、特にこれまでの報告がない領域(高温領域)に注目する。超臨界二酸化炭素の測定条件内では、liquid likeとgas likeな領域が報告されている。今後の研究では、このliquid or gas likeな条件の境界付近とgas likeな領域の実測値を蓄積する。 2.拡散係数予測のモデル化を目指して、金属錯体の分子体積、表面積や表面電化分布などの分子情報を用いて拡散係数の予測をおこなう。そのために、測定物質、条件に対する量子化学計算を推進していく。また、これまでに報告されているモデルを本研究の測定領域まで拡張する方法も考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止策として、緊急事態宣言および蔓延防止措置等がおこなわれたことで学生、教員の大学への入構自体が制限された期間があった。実験をおこなえない期間があったこと、装置や材料の購入が予定通りおこなわれたかったことで、次年度使用額が生じた。
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