低級アルカンの酸素酸化反応として,メタンをターゲットとし安価な酸化剤として酸素を用いて酸化反応を行った.メタンは低級アルカンの中でも最も反応性に乏しく,メタノール・ホルムアルデヒドなどの酸化反応生成物は基質より反応性が高く選択性のコントロールが難しいため,選択率の高い触媒の開発を目的とする.また,本研究で中心となる金属導入ポリオキソメタレート(POM)は,骨格内に1原子単位で活性点を作り込むことができる材料であるため,精密に設計した活性点を有する均一な固体触媒を合成可能である.そこでメタン酸化反応においても高い選択率を示す活性点構造を合理的に設計できると考えた. 初年度は,523-623 Kという比較的低温の条件でメタン酸化活性を有するPOM触媒の探索をおこなった.3d金属を中心に金属導入POMのスクリーニング試験を行った結果,鉄やニッケルを欠損型POMに導入した触媒においてメタノールやホルムアルデヒドが生成することを見出した.特に鉄二核導入シリコタングステート(Fe2)のセシウム塩触媒において二酸化炭素の生成を抑えて,比較的高い選択率でメタノール・ホルムアルデヒドを得た.一方で触媒回転数(TON)は1を大きく下回っており,メタン転化率が低いことが問題であった.これは反応温度が低温であるが故に活性点の再生(再酸化)がほとんど進まないためと考えられる。そこで最終年度は,メタン転化率とTONの向上を目指して,さらに高温条件でメタン酸化反応を行った.Fe2のテトラブチルアンモニウム塩をSiO2に0.16wt%担持して873 Kで反応を行ったところ,二酸化炭素の生成を抑えてホルムアルデヒド・一酸化炭素を合わせて収率2.0%(選択率87%)を達成した.本研究成果に関して,国際論文誌に1報受理され,学会で6件の口頭発表を行った.
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