多様な天然資源の利用と石油プロセスからの脱却を目指し、基礎化成品の製造プロセスが見直され始めている。近年、ゼオライトを触媒としたメタノール転換オレフィン生成反応が注目されている。触媒の構造・性質によってオレフィン類の選択性が変わるが、未だ高選択性を示す触媒の設計は困難である。本申請研究では、ゼオライトの細孔構造と、オレフィン生成反応の主要中間体・主要反応経路との対応関係を明らかにすること、そして活性点位置を制御した合成を行い、高選択性を有するオレフィン生成触媒を提案する。 2022年度には、前年度明らかになった、Al分布の異なるZSM-5(モデル触媒)上でのプロピレン生成メカニズムについて詳細に検討した。同位体過渡応答解析を丁寧に行うことで、細孔内に酸点が多く分布する場合は長鎖オレフィンを中間体とし、細孔交点に酸点が多く分布する場合には単環芳香族種が中間体となることが示唆された。さらに、モデル触媒であるZSM-5(MFI型)に加え、LTA型ゼオライトを用いた検討を行った。また反応物としてメタノールだけでなくエチレンを用いたエチレン転換オレフィン合成反応に取り組んだ。エチレンはメタノールに比べ厳しい反応条件を必要とするだけでなく、反応中間体が単環から二環芳香族種へと変化することにより細孔閉塞と触媒失活が激しくなることが確認された。この系に対し微量のメタノールを加えることで触媒寿命を10倍ほど延ばすことに成功した。
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