研究課題/領域番号 |
20K15088
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
朝倉 博行 京都大学, 実験と理論計算科学のインタープレイによる触媒・電池の元素戦略研究拠点ユニット, 特定講師 (40631974)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸素還元反応 / 電極触媒 / Operando / 導電性 |
研究実績の概要 |
固体高分子型燃料電池触媒における従来の炭素担体の腐食などの問題解決が求められている. 本年度は,導電性金属酸化物であるIn2O3にPtを担持した触媒について検討した.Pt/In2O3は市販の代表的なPt/C触媒に対して高い比表面積活性および耐久性を示すことを見出した.金属酸化物担体上にPtを担持すると,Ptから金属酸化物への電荷移動が促進され,酸素還元反応の活性が低下するとの予測もあるが,金属酸化物担体を用いた他の検討結果と同じく,比表面積あたりの触媒活性は向上していた.また,Pt 触媒は電気化学反応中に酸化還元状態が大きく変化することが知られており,この変化には担体も影響することも知られている.触媒活性点であるPt種と担体との相互作用,電気化学条件下における状態変化を明らかにするため,Operando 計測により導電性金属酸化物担持Pt触媒の酸素還元触媒作用を検討した結果,低電位側から徐々に高電位側に掃引した際,C上に担持されたPtよりもIn2O3上に担持されたPtの方がより高電位側まで酸化が抑制されていることが判明した.金属酸化物担体を用いた場合の動作条件下における分析の報告は少なく,金属酸化物担体がPtの電子密度の向上及び強い金属-担体相互作用により,Ptが安定化されていることを示唆する重要な知見であると考えている.一方,担持Pt種の構造を完全に制御できているわけではないので,より厳密な検討が必要であるとともに,Pt量当たりの活性はPt/Cに比べて同等程度であるため,さらなる活性向上のための検討が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高活性かつ高耐久性の酸素還元反応電極反応用の導電性金属酸化物担体の開発を目指して,研究を進めた. Pt/In2O3のIn2O3担体へのNbなどの異種金属ドープによる活性向上を試みた.一定の条件で活性は向上するものの,安定性に欠けるなどの問題があった.そこで,本年度は,Pt/In2O3触媒の活性,耐久性および酸素還元反応条件下における状態分析(Operando測定)を行うことで,金属酸化物担体がPtに及ぼす作用を検討した. Pt/In2O3は市販の代表的なPt/C触媒に対して高い比表面積活性および耐久性を示した.金属酸化物担体上にPtを担持すると,Ptから金属酸化物への電荷移動が促進され,酸素還元反応の活性が低下するとの予測もあるが,金属酸化物担体を用いた他の検討結果と同じく,比表面積あたりの触媒活性は向上していた.触媒活性点であるPt種と担体との相互作用,電気化学条件下における状態変化を明らかにするため,Operando 計測により導電性金属酸化物担持Pt触媒の酸素還元触媒作用を検討した結果,低電位側から徐々に高電位側に掃引した際,C上に担持されたPtよりもIn2O3上に担持されたPtの方がより高電位側まで酸化が抑制されていることが判明した.金属酸化物担体を用いた場合の動作条件下における分析の報告は少なく,金属酸化物担体がPtの電子密度の向上及び強い金属-担体相互作用により,Ptが安定化されていることが示唆された.一方,担持Pt種の構造を完全に制御できているわけではないので,より厳密な検討が必要であるとともに,Pt量当たりの活性はPt/Cに比べて同等程度であるため,さらなる活性向上のための検討が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに導電性金属酸化物であるIn2O3およびこれに異種金属をドープした担体を用いたPt触媒の合成と酸素還元反応活性および耐久性について検討してきた.既存のPt/C触媒に対して,高い比表面積活性および耐久性を示したが,Ptの単位重量当たりの活性はあまり向上していない.一方,Operando 計測により,触媒の低電位側から徐々に高電位側に掃引した際,C上に担持されたPtよりもIn2O3上に担持されたPtの方がより高電位側まで酸化が抑制されていることが判明した.このことは,より電子供与的な導電性金属酸化物を担体とすることで高い活性を実現できる可能性を示唆している. そこで,今後はすでに試みたようなNbのドープ,すなわち金属カチオンドープではなく,金属酸化物の窒化処理による酸窒化物,すなわちアニオンドープ型の金属酸化物の合成とPt触媒担体への応用を行う.酸窒化物は単純な酸化物に対して耐久性低下の恐れがあるが,金属酸窒化物あるいは金属窒化物の電気化学反応への応用は知られており,十分な耐久性が期待できる.例えば,TiO2を部分的に窒化し,導電性の付与を試みた例は存在するが,酸素還元反応活性はあまり高くない.十分な導電性を有するIn2O3を窒化することにより,電子供与を促進することで高い触媒活性と耐久性を両立した触媒の開発を目指す.更に,Pt/In2O3の際と同様,Operando 計測により,担体からPtへの電子供与をその場観察,さらに担体間の比較を行うことでメカニズムについて検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により実験計画に変更が生じたため,次年度使用額が生じた. 本年度の研究進行状況から,次年度は本年度予定していた備品を購入する見込みである.
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