研究課題/領域番号 |
20K15090
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
津野地 直 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (40758166)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゼオライト / 層状ケイ酸塩 / 水熱合成 / リン修飾 / ゼオライト水熱転換 / エレクトロスプレーイオン化質量分析 / メタノール転換反応 / 触媒 |
研究実績の概要 |
ゼオライトは、そのナノレベルの結晶性規則構造に基づいた機能により、工業触媒としての地位を確立している。しかし、その合成は場当たり的なトライアンドエラーおよび経験則に基づいており、その構造を原子レベルで設計すること、さらにはその設計に基づいて触媒機能を制御することはいまだ困難である。本研究では、申請者が独自に開発した水熱合成法と二次元構造を持つ新規材料を活用することで、現状達成困難なゼオライトの巨視的・局所的な構造設計を行い、固体構造解析、理論計算を組み合わせた多角的視点から、本設計によってゼオライトの触媒特性をどこまで制御可能になったかを明らかにする。 本年度は、ゼオライト合成過程の制御に関しては、Al原料をゼオライト水熱合成系に追加添加するAl添加法により、CHAゼオライトの優れた合成系を発見すると共に、その合成過程を分析することで、合成結果をもたらしている中間構造の特定を行った。また、ゼオライトのリン修飾に関しては、連晶構造を持ったゼオライトへのリン修飾およびあらかじめリン含有テンプレートを含侵したゼオライト原料を用いた効果的なリン修飾ゼオライトの合成を検討した。ゼオライトナノシートに関しては、合成系に追加の有機鋳型を添加することで、シート厚をさらに薄くすることに成功した。 層状ケイ酸塩に関しては、表面水酸基へ金属活性種が固定化された構造を理論計算によって可視化し、そこから予想された層間構造と実構造を比較・検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、ゼオライト合成過程の制御に関しては、Al原料をゼオライト水熱合成系に追加添加するAl添加法により、CHAゼオライトの優れた合成系を発見すると共に、その合成過程を分析することで、合成結果をもたらしている中間構造の特定を行った。得られたCHAゼオライトは、既存の手法と比較して、広い組成範囲で合成でき、かつ結晶化速度、収率とも優れていた。また、ゼオライトのリン修飾に関しては、連晶構造を持ったゼオライトへのリン修飾およびあらかじめリン含有テンプレートを含侵したゼオライト原料を用いた効果的なリン修飾ゼオライトの合成を検討し、合成に用いる有機テンプレート、出発原料を適切に選択することで、任意のゼオライト構造にリン修飾を行えることを確認した。ゼオライトナノシートに関しては、合成系に追加の有機鋳型を添加することで、シート厚をさらに薄くすることに成功した。シート厚の減少による触媒活性の更なる向上を確認した。 層状ケイ酸塩に関しては、表面水酸基へ金属活性種が固定化された構造を理論計算によって可視化し、そこから予想された層間構造と実構造を比較・検証した。実験値の層間距離は、予想値よりわずかに小さい傾向にあったが、これは、実験値と理論値の間で、固定されている金属上の有機リガンドの数が異なっていることで説明できた。
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今後の研究の推進方策 |
ゼオライト合成に関しては、種結晶添加法、ゼオライト転換法、多段階で合成ゲルの組成調製を行うstepwise法を用いることで、耐久性、排ガス浄化性能に優れるゼオライトの合成を引き続き検討していく。また、その合成過程を固体NMRおよび質量分析法を組みあわせた手法によって調査する。対象とするゼオライトはCHA等の小細孔ゼオライトおよびMFI,BEAゼオライトとする。 ゼオライトリン修飾に関しては、リン修飾源である有機テンプレートや同時に添加するアルキルアンモニウムを適切に選択することで、ゼオライト内の修飾リン種の構造分布制御を狙っていくと共に、炭化水素クラッキング反応によって、リンの修飾効果を確認する。 ゼオライトナノシートに関しては、さらにシート厚が薄くなった材料に対して、形成メカニズムの調査を、様々な分析法を用いた多角的な解析手法によって行う。 層状ケイ酸塩に関しては、昨年度行った理論計算のデータをさらに最適化すると共に、多段階的な表面修飾を検討し、高性能な触媒・吸着サイトの設計を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度の物品費が余分に必要になると予想されたため。 材料合成および解析に関わる消耗品に使用予定。
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