研究課題/領域番号 |
20K15091
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
今村 和也 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (30750624)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光触媒 / バイオエタノール / バイオマス / 酸触媒 / アセタール化 |
研究実績の概要 |
バイオエタノールは代表的なバイオマスであるが、その用途は燃料に限定されている。それにも関わらず、燃焼効率がガソリンに比べて低いという課題がある。バイオエタノールをより有効に活用するために、エタノールをより燃焼効率の高い物質、あるいは価値の高い材料へと変換する必要がある。エタノールから合成することができる1,1-ジエトキシエタン(1,1-DEE)はエタノールより燃焼効率が高く、有機合成における溶媒としての使用が期待されている物質である。そこで本研究ではバイオエタノールの用途を広げることを目的とし、まずはエタノールから1,1-DEEへの変換反応に着目した。これまでにエタノールから1,1-DEEへの触媒的な変換反応が報告されているが、高価な貴金属を使用する、酸の添加が必要なため反応後に廃液を発生するという課題があった。そこで本研究では、表面に酸点を持つ酸化チタン(TiO2)光触媒を使用し、エタノールから1,1-DEEへの変換反応を開発することを目的とする。TiO2は濾過・遠心分離で容易に回収できるため廃液を発生しない。また、高価な貴金属も、酸の添加も不要な反応系を達成することができる。今年度は次の結果を得ることができた。TiO2を使用することで、エタノールからDEEを光触媒的に合成することができた。本反応は(1)エタノールからアセトアルデヒドへの光触媒的な酸化(2)アセトアルデヒドとエタノールの熱触媒(酸触媒)的なアセタール化の二段階の反応で進行していることがわかった。系内の酸素の濃度が反応速度に与える影響を検討し、本反応の律速段階が酸素の拡散であることが示唆された。また、十分な検証ができていないものの、太陽光で実験を行い1,1-DEEの生成速度とUV強度、気温に相関関係があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はTiO2をベースとした光触媒を使用して、エタノールから1,1-DEEへの変換反応を検討することにした。この時、(1)助触媒の検討、(2)酸素分圧の影響、(3)中間体の評価(反応メカニズムの検討)を重点的に実施した。(1)の検討についてはほとんど終了し、何も担持していないTiO2が最も活性が高いと結論づけた。(2)については酸素の拡散が律速であることがわかってきたものの、速度解析のためには、より精度の高い酸素分圧の制御が必要である。(3)の検討については、中間体であるアセトアルデヒドの定量に成功しており、エタノールからアセトアルデヒドへの変換反応は光触媒的であり、アセトアルデヒドから1,1-DEEへの反応はTiO2の酸触媒作用によって進行していることがわかった。これらの研究結果を学会にて発表することができた(安井真優, 恩田歩武, 今村和也, 酸化チタン(IV)光触媒によるエタノールから1,1-ジエトキシエタンへの変換反応における溶媒効果,第39回光がかかわる触媒化学シンポジウム,オンライン、2020/11/27)。
以上のことから、コロナ禍で学生があまり実験できなかったことを考慮すると、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で検討しているエタノールから1,1-DEEへの変換反応には酸触媒反応が含まれていると考えられる。それゆえ、加熱することで反応が加速するはずである。次年度は、本年度明らかにすることができなかった反応条件の詳細な検討に加えて、熱の効果を検討する。特に、太陽光を光源・熱源として利用することを検討するために、本年度に購入したUV・温度・照度記録計を使用して、実際に太陽光で反応させることを検討する。また、可視光駆動型光触媒として酸化セリウム、セリウムジルコニウム複合酸化物、ビスマス系、モリブデン系の化合物など、バンドギャップが可視光域であり酸点を有する化合物を検討する。今年度も学生1人が実験できる回数が減ることを予想し、触媒合成担当と反応担当の二人で担当することで研究を加速させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
PacifiChem2020に参加予定であったが、COVID-19の蔓延によりこれが中止になった。そのほかいくつかの学会がオンラインとなり旅費が全くかからなくなった。また本年度GCを購入予定であったが、廃棄されるGCを譲り受けることができたのでこれで代用した。来年度は反応中間体を分析するためのGCを購入し、研究を深化させる。
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