本年度は昨年度に引き続き、低温・水蒸気共存下での窒素酸化物除去を目指し、バナジウム複合酸化物触媒の合成を目的とした。 アルカリ金属は脱硝触媒の酸点の阻害要因として知られている。一方、アルカリ金属は酸化バナジウムの層間に挿入されることで、結晶構造を変化させることが可能である。そこでナトリウムを酸化バナジウムにインターカレートすることで、酸化バナジウムブロンズ化合物の合成を試みた。 シュウ酸塩法により触媒前駆体であるメタバナジン酸と硝酸ナトリウムの量を変化させることで、様々なナトリウム量をもつ酸化バナジウムブロンズ化合物を合成した。XRD測定から、Na0.33V2O5とNa1.2V3O8が単相化合物として得られることが分かった。従来これらの化合物は固相反応法や他の煩雑な手法で合成されるが、化学的手法により300oCという低温焼成で酸化バナジウムブロンズ化合物が得られることが分かった。 150oCにおけるNH3-SCR活性を測定したところ、V2O5は昨年度報告と同様、82% (dry)、47% (10 vol% water) のNO転化率で、水蒸気導入により活性が低下した。 一方、Na0.33V2O5を触媒とした場合、<92% (dry)、86% (10 vol% water) のNO転化率を示し、水蒸気による活性低下が抑制された。比表面積当たりの反応速度を比較すると、Na0.33V2O5は従来の市販触媒と比較し、89倍大きい反応速度を示すことが分かった。 反応機構解析をおこなったところNa0.33V2O5は純粋なV2O5にはない、NOの吸着サイトが存在することが示唆され、従来触媒と異なる反応機構で反応が進行していることがわかった。またバナジウム原子は反応中V5+⇔V4+のレドックスが生じていることが示唆された。
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