研究課題/領域番号 |
20K15101
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 政友 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任助教 (30844419)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肝障害 / ヒト肝腫瘍由来細胞株HepG2細胞 / 薬物アッセイ / 親水性代謝物 |
研究実績の概要 |
今年度は,肝障害を評価する薬物アッセイシステムを立ち上げることを目的として,肝障害発症の作用機序が知られている数種類の薬物を用いてヒト肝腫瘍由来細胞株HepG2細胞の培養手法および薬物処理手法の検討を実施した.具体的には,Nilutamide (ミトコンドリア機能損傷を誘導),Tilorone (リン脂質症を誘導),Tamoxifen (脂肪症を誘導),およびClozapine (酸化ストレスを誘導) を用いて96 well plateに播種する細胞数,播種してから薬物処理までの培養時間,IC10およびIC50に基づく各薬物の処理濃度および処理時間の検討を行った結果,HepG2細胞を再現よく安定的に培養することができることが明らかになった.以上の検討した結果を基にした薬物アッセイシステムを用いて,各薬物処理したHepG2細胞からの抽出液をイオンクロマトグラフィー高分解能タンデム質量分析 (ion chromatography high-resolution tandem mass spectrometry, IC/HRMS/MS),および液体クロマトグラフィー高分解能タンデム質量分析 (Liquid chromatography high-resolution tandem mass spectrometry, LC/HRMS/MS) に供したところ,合計で約100種類の内生の親水性代謝物情報 (ヌクレオチドや有機酸,補酵素類などといった陰イオン性代謝物,ヌクレオシドや核酸塩基といった陽イオン性代謝物,アミノ酸などの両性イオン) の取得に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究の目標は,薬物由来代謝物の網羅的な探索と生体内で起こるイベントを高解像度で捉えることができるメタボローム解析を実施し,様々な薬物代謝酵素によって生成される薬物およびその代謝物の質と量がDILI発症とどのように関わっているかを高精度で評価・予測することである.今年度は,肝障害を正確に評価・予測することが可能な薬物アッセイシステムを立ち上げることを目的として,肝障害発症の作用機序が知られている数種類の薬物を用いてヒト肝腫瘍由来細胞株HepG2細胞の培養手法および薬物処理手法の最適化を実施した.さらに,最適化した薬物アッセイシステムを用いて,各薬物処理したHepG2細胞からの抽出液をIC/HRMS/MSおよびLC/HRMS/MSに供したところ,合計で約100種類の内生の親水性代謝物情報の取得に成功した.以上のことから,今年度の目標として掲げていた『薬物アッセイシステムを立ち上げること』を滞りなく進めることができており,当初の計画どおりに研究が進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,今年度構築した細胞アッセイシステムを用いて肝障害発症の作用機序が知られている薬物の評価を実施する.具体的には,各薬物を処理したHepG2細胞中に含まれている代謝物 (親水性代謝物だけではなく脂質) を分析し,作用機序ごとに内生の代謝物にどのような変化が見られるかを観測する.さらに,薬物およびその代謝物を包括的かつ定量的に取得することを目指す.本研究により,薬物由来代謝物の網羅的探索とメタボローム解析を用いた薬剤暴露による生体内の代謝変動を統合して解析することで, DILI発症に関与する薬物代謝物の種類を特定し,外因性および内因性の代謝変動とDILI発症との関連性について調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞アッセイシステム開発の検討が予定していた金額よりも安く実施できたため繰越金が発生した.また次年度は今年度構築した細胞アッセイシステムを用いて多数の薬物の評価を計画している.そのため,繰越金は薬物評価を実施するための消耗品費として使用する予定である.
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