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2020 年度 実施状況報告書

革新的ハロゲン制御型ラクトン化酵素と有機触媒系ハイブリッド補因子の創製

研究課題

研究課題/領域番号 20K15103
研究機関長浜バイオ大学

研究代表者

知名 秀泰  長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助教 (70570282)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード有機溶媒耐性ペルヒドロラーゼ / ブロモラクトン化反応 / 選択的exo環化 / ハロゲンイオン結合部位 / 異種変換 / pH安定性 / エステラーゼ活性 / 超原子価ヨウ素化合物
研究実績の概要

本研究は、申請者が先行研究で獲得した有機溶媒耐性ペルヒドロラーゼを幅広く応用可能にすることを目的としており、この酵素を起点とした人工的な異種変換により様々な有用酵素に分岐させると共に、更なる汎用性の向上を志向した有機触媒とのハイブリッド系を構築し、様々な化学合成用酵素の獲得に取り組むものである。Streptomyces aureofaciens由来のペルヒドロラーゼ(BPO-A1)は、ブロモペルオキダーゼ活性の他にエステラーゼ活性も有する多機能性酵素であり、様々な酵素への異種変換が期待できる。
近年では、環境調和を志向した分子内環化反応が注目される中、特に構造異性体や立体異性体などのハロ環化体を選択的に与える高度なハロゲン制御型環化反応が求められており、本研究では、その第一歩となるexo環化型ブロモラクトン化反応を選択的に触媒する変異酵素の開発に成功した。またこの結果は、これまで否定されていたペルヒドロラーゼにおけるハロゲンイオン結合部位の存在を強く示唆するものであり、ハロゲン分子中のハロゲン原子結合部位を構築する上で酵素化学的に大変意義がある。
本研究の起点となるBPO-A1では、基質汎用性を高めるために基質ポケットの拡大が一つの課題となっており、その検討過程でブロモラクトン化反応の環化効率を高める変異体が得られた。また、本酵素は至適pHでの安定性が低いことが応用研究への大きな足かせとなっているが、C末端へのHisタグ及びAspタグの付与が酸性条件下でのpH安定性を高めることができた。また、有機溶媒耐性ペルヒドロラーゼと有機触媒のハイブリッド系構築に関する取り組みとしては、本酵素の新規補因子の創製を志向し、様々な超原子価ヨウ素前駆体を合成した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、Streptomyces aureofaciens由来のペルヒドロラーゼによるエステラーゼ活性を確認したと共に、酵素学的に稀なブロモラクトン化反応を見出した。興味深いことに、推定ハロゲンイオン結合部位のArg55に部位特異的変異を導入したことで、4-ペンテン酸に選択的exo環化反応を触媒する変異体を得ることができた。特に、Alaの変異導入でexo環化の選択性が高まったことから、ハロゲンイオンの認識には他の重要なアミノ酸残基の寄与が考えられる。また、本酵素の酸耐性能の向上を志向し、BPO-A1のC末端にオリゴペプチドを付与した結果、Arg8タグではpH5での安定化には適切ではなかったが、His8やAsp8などのタグではpH5での安定化に効果的であった。一方、基質汎用性を高めるための基質ポケットの改変計画においては、TrpやPheなどの嵩高い側鎖を持つアミノ酸をAlaに置換した幾つかの変異体を作製した。基質汎用性を劇的に変化させるものは未だ得ていないが、4-ペンテン酸誘導体において環化効率を高める変異体が得られている。また、様々な超原子価ヨウ素補因子前駆体を用意したため、今後、基質ポケットを拡大した変異酵素へ適用させる必要がある。

今後の研究の推進方策

本課題は、(1)基質ポケットの拡大による基質汎用性の改善、(2)酸耐性酵素の開発、(3)異種変換による新規脱ハロラクトン化酵素の創製、および(4)超原子価ヨウ素補因子の創製、の4つで計画しており、詳細を下記に示した。
(1)に関しては、幾つかの変異体を作製したものの、基質汎用性を劇的に変化させたものは未だ得ていない。部位特異的変異導入による検討は、今年度も継続するが、中には可溶化しなかった変異体も存在するため、大腸菌ホストや無細胞タンパク質合成システムなどを検討する計画である。この改善は、(2)や(3)の推進にも繋がり得る。また、ブロモペルオキシダーゼ活性における補因子の検討と共に、ハロラクトン化反応における基質汎用性を検討する。更に、本酵素はエステラーゼ活性を有することから、ヒドロキシ酸を基質とするラクトン化反応も検討する。尚、購入が困難な基質においては、適宜合成し用意する。
(2)においては、N末端へのタグの付与を検討すると共に、酵素表面上の酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸を標的に部位特異的変異導入を試みる。また、酵素表面上のリジン残基を標的にHis8やAsp8などのタグを化学修飾し、pH安定性を検討する。更に、力学的な観点からのpH安定性の改善のため、人工的なジスルフィド結合の導入を試みる。
(3)においては、酵素学的ブロモラクトン化反応における選択的exo環化を進行させる変異体が見つかっているため、更なるハロゲンイオン結合部位の変異を模索し、endo環化型変異酵素の開発を試みる。また、今年度から脱ハロラクトン化反応を触媒する酵素への異種変換にも取り組むため、ハロカルボン酸などの有機ハロゲン分子のハロゲン原子を認識し得る酵素への改変を試みる。
(4)においては、様々な超原子価ヨウ素補因子前駆体を用意したため、(1)で基質ポケットの拡大した変異酵素へ適用性を検討する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Practical synthesis of 2-iodosobenzoic acid (IBA) without contamination by hazardous 2-iodoxybenzoic acid (IBX) under mild conditions.2021

    • 著者名/発表者名
      Hideyasu China, Nami Kageyama, Hotaka Yatabe, Naoko Takenaga, Toshifumi Dohi
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 26 ページ: 1897

    • DOI

      10.3390/molecules26071897

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Halogen-induced controllable cyclization as diverse heterocycle synthetic strategy2020

    • 著者名/発表者名
      Hideyasu China, Ravi Kumar, Kotaro Kikushima, Toshifumi Dohi
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 25 ページ: 6007

    • DOI

      10.3390/molecules25246007

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2021-12-27  

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