研究実績の概要 |
本研究では、オリゴペプチド付与による有機溶媒安定性の向上を志向し、ブロモペルオキシダーゼ(BPO-A1, BPO-A2:Streptomyces aureofaciens由来)、クロロペルオキシダーゼ(CPO-L:S. aureofaciens由来、CPO-S:Serratia marcescens由来)、エステラーゼ(Est-F:Pseudomonas. fluorescens由来)およびデヒドロクマリンヒドロラーゼ(Acinetobacter calcoaceticus由来)に対してC末端にヒスタグを付与し、有機溶媒安定性を野生型と比較した。その結果、BPO-A1へのヒスタグ付与が最も高い効果を示した。また、メチオニン選択的修飾反応およびクリック反応などの生体直交型反応を利用して、BPO-A1のC末端にFmoc固相合成法により化学合成したヒスタグを修飾した場合においても同様な有機溶媒安定性を示した。これは、C末端領域には疎水性コアが存在しており、付与したヒスタグの親水性が酵素内部への有機溶媒の侵入妨害に寄与したと考えられた。そこで、疎水性コア近辺に位置する末端以外のアミノ酸残基をMetに置換し、同様な方法でヒスタグを付与した修飾酵素の有機溶媒安定性を評価した結果、3つの変異酵素-ヒスタグ複合体(Q19M-His8、D213M-His8、N242M-His8)がヒスタグ付与において高い効果を示した。本法の構築は、狙った複数個所の位置に親水性オリゴペプチドを付与することが可能であることから、有機溶媒安定性を高める重要な手法となり得る。
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