最終年度である2021年度は,初年度で開拓したセリウム含有層状ペロブスカイトならびにそれらから誘導される電荷中性層について,その詳細な光物性調査を進めた。特に,新規に発見したCsCeNb2O7は,すでに発見していたRbCeTa2O7と同構造であるにも関わらず,その発色が劇的に変化することが分かった。RbCeTa2O7は淡緑色である一方で,CsCeNb2O7は暗褐色であり,これは,赤色の吸収が顕著になったことで生じたものである。この原因を第一原理計算に基づく電子構造を推定したところ,O2p価電子帯ならびにNb4d伝導帯間のバンドギャップがRbCeTa2O7と比べて狭小化したことで,Ce4f軌道とそれらの軌道間エネルギーが減少したことに由来する。希土類層状ペロブスカイトにおいてこの発色変化は極めてユニークで,RbLaTa2O7とCsLaNb2O7はいずれも白色であり,RbPrTa2O7とCsPrNb2O7はいずれも淡緑色である。セリウムのみにこのような明確な発色変化が起きる原因は,Ce4f軌道がバンド内に位置するためである。 他方,セリウムの電荷中性化は電気化学的にも引き起こされることが,再クリックボルタンメトリーにより明らかになった。特に,酸化体から還元体への還元反応も観測されたことから,化学的に可逆的な変化を示すことも明らかとなった。
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