研究実績の概要 |
本研究の目的は、本研究の開発した DPA G4 (Dendritic Phenyl Azomethine) デンドリマーを鋳型としてPtをベースにした「典型元素 (In,Sn,Bi) との組合わせから高活性高耐久性に優れた触媒性能を持つ部分酸化Pt多元合金サブナノ触媒」を実現し、そのメカニズムを明らかにした。 本研究は、電子陽性を示す典型元素のリガンド効果を利用してPtの電子状態をチューニングする手法を考案し、新たな合金サブナノ触媒を創生した。本触媒は、工業的に多段階酸化変換プロセスを要するシクロヘキサン(Ch)から6,6-ナイロンの原料の工業的重要中間体であるアジピン酸(AA)への直接酸合成を実現する研究を行い、高いAA収率を目指した。 本年度は、高活性要素のPtSnと高耐久性の要素Cuを用いたPt5Sn8Cu6三元素合金サブナノ触媒の合成やChの反応条件を最適化し、結果として危険な添加剤や溶媒を用いず酸素酸化のみで 52.3% のAAの収率を得た。PtSnCu三元素サブナノ触媒は合金化されたことはSTEMやEDSの測定で確認した。 メカニズムを明らかにするために、XANES測定や計算を行った。XANES測定によると高活性のPtSnCuとPtSnのPt原子がより酸化状態にシフトし、PtSnCuのCu原子の電子状態が1価になっていることが確認され、高活性・高耐久性の要因と考える。また、密度汎関数計算によるとPtSnCuの粒子を用いた場合、粒子表面に吸着するO2の酸素原子間距離が1.529 Aになり、PtSnとPtCuと比べて最も長い距離となった。この距離は活性の非常に高いペルオキシドの酸素原子間の距離とほぼ同じである。サブナノ触媒PtSnCuの合金組合せでPtの原子がより酸化状態になり、Cuが1価になり、酸素が活性化されると考え、新たな高活性や高耐久性の触媒を実現したと考える。
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