研究課題
本研究では,反強磁性体のスタガード磁化の制御を目指し,C11b構造を有するCr2Alに着目している.前年度までに,50 nm程度の薄膜において,高クオリティなC11b構造の作製条件を明らかにした.本年度は,まずスタガード磁化制御において重要な更なる薄膜化に取り組んだ.10 nm程度の薄膜領域では,50 nm程度の比較的高膜厚領域と比べると,製膜において蒸気圧の高いAlが再蒸発の寄与が大きく組成制御が難しいことが明らかになった.結果として,前年度までに得られた50 nm薄膜に比べて,低温での製膜が必要であることがわかった.したがって,薄膜領域での高規則度化に関しては,基板温度を600 ℃程度のAl蒸気圧が十分低い領域に保ち,後に熱処理を行うことが適切であると考えられる.加えて,スタガード磁化の電気抵抗による検出およびC11b Cr2Alの磁気モーメントの向きに関して検討するため,強磁場印加下での磁気抵抗効果測定にも取り組んだ.C11b Cr2Alの異常磁気抵抗効果の成分は磁気抵抗比にして0.01%程度であった.また,磁気抵抗比は磁場方位の回転対して,2回対称であった.先行研究において,C11b Cr2Alの磁気モーメントの向きとして,c面内にあるというものとc面内からやや傾いているというものがあるが,このうち前者を支持する結果となった.以上の結果に関しては,追加実験の後,論文投稿の予定である.また,第45回 日本磁気学会学術講演会において,前年度の成果に加える形で成果発表も行った.以上の結果に加えて副次的に得られた室温近傍で製膜を行ったBCC Cr-Alに関する結果に関しては論文発表を行った.
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Physica B: Condensed Matter
巻: 620 ページ: 413281~413281
10.1016/j.physb.2021.413281