研究実績の概要 |
疎水性アルキル修飾した硫化カドミウム (CdS)コロイド半導体量子ドット (Colloidal Semiconductor Quantum Dot, 略 CS-QD)がトルエン等の芳香族系有機溶媒中で、低濃度 (1 wt%)にも関わらず高い粘度増加を示すことを発見した。また、電子顕微鏡観察およびX線回折測定から規則配列を有する3次元高次構造を形成していることを明らかにした。本現象は球状粒子固有の等方的な相互作用では説明がつかず、添加剤およびテンプレートを使用することなくCS-QDゲルを得られる興味深い現象である。本年度は、CdS QDのゲル化を利用した長周期低次元構造の構築に関する追試と研究成果発表を行った。 初年度には、CS-QDが疎水溶媒中で自己集合的に3次元高次構造体を形成する機構を検証した。貧溶媒による沈殿法や超遠心法など異なる精製方法を用い、得られる分散液のゲル化挙動を調べ、CS-QDの合成前駆体であるカドミウムテトラオレートの量が疎水性溶媒中のゲル化挙動に大きく影響することを発見した。 次年度では、エレクトロスピニング法による紡糸を試みた。ゲル濃度、印加電圧、押出速度を調整することで直径110 nm程度で数百μmにもおよぶCS-QDナノファイバーを作成することに成功した。電子顕微鏡観察およびX線回折測定から形成されたナノファイバーはCS-QDが蜜にパッキングされていることが明らかとなった。ゲルの動的粘弾性測定の結果から、ズリによる3次元ネットワーク構造の崩壊後、非常に速い速度で構造の再形成が起こることがわかった。この速い構造の再形成がエレクトロスピニング法によるナノファイバーの形成に寄与することを明らかとした。本成果は、CdS CS-QDのみならず他のコロイド粒子を長周期低次元配列させるための手法を提案するものである。
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