研究課題/領域番号 |
20K15115
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山口 直也 金沢大学, ナノマテリアル研究所, 特任助教 (70868116)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スピン分裂 / ラシュバ効果 / 表面・界面モデリング / 電界効果 / 電場 / ベリー位相 / 第一原理計算 / スピン流-電流変換 |
研究実績の概要 |
光誘起スピン流-電流変換が生じるBi2O3/Cu(111)界面のような複雑な二次元系のモデリングを素早く行うために、まず、簡単な構造であるが巨大なラシュバスピン分裂を生じるBi/Ag表面合金系を対象としてモデルの提案を試みた。ビスマス原子をIII-V族の15種類の原子に置換したM/Ag表面合金系(Mは置換原子)に対して、密度汎関数理論に基づく第一原理計算によって決定された構造パラメータ(原子座標など)と剛体球モデルから、表面合金系の構造の記述に特化した原子半径を提案した。この第一原理的に決定された原子半径を用いれば、欠陥など入った系、すなわち、大きな周期系に対しても、ある程度良い表面合金モデリングが可能になることが期待される。また、第一近似として、この原子半径から構築した表面合金モデルを初期構造として、構造最適化のステップの省略も行えると期待できる。 また、電界効果によるスピン流-電流変換の制御性を調べるために、種々の絶縁体結晶を対象として電場印加計算を行うことを試みた。利用している第一原理計算プログラムOpenMXに、自身で周期系への適用も可能なベリー位相の方法による電場印加機能のプログラムを書き加えて計算を行っているが、電場による原子に働く力のオーダーは小さく、OpenMXにおける非直交系の結晶セルかつエネルギー汎関数が一般化勾配近似(GGA)の場合の力の計算の誤差のオーダーに匹敵していた。そのため、密度勾配の記述部分を改良し、また、実空間グリッドによる誤差を軽減するようにグリッドの原点をずらして再計算するように改変することで、力の誤差を小さくし、より一般的な条件で電場印加下での構造最適化が可能となった。電場下の構造最適化が必要な静的誘電率の計算についても有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電場印加計算のプログラムの利用で生じた問題を解決するためのプログラムの改良で遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果で得られた表面合金モデリングの方法を参考にして、候補系となるラシュバ界面のスクリーニングに必要なモデリングの簡便化を行うなどして研究遂行を加速させる。 軌道ラシュバ効果の解析プログラムの開発に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響のため学会のオフライン開催が無くなり、旅費の使用が無くなったため、及び、当初計画の研究遂行の遅れにより、大規模な計算の予定が今年度には生じなかったため、次年度使用額が生じた。 今後の助成金使用計画として、安定的な計算資源の確保のため、中規模のワークステーションの導入を検討している。
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