研究課題/領域番号 |
20K15126
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
廣瀬 大亮 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20854673)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 溶液プロセス / 液体プロセス / 金属酸化物 / チタニア / ナノインプリント |
研究実績の概要 |
本研究では液相法におけるチタニアの中間体(チタニアゲル)の構造解析を通して、金属酸化物ゲル構造の制御を行う。本研究の目的は、優れた熱変形性を有し、ナノインプリントによる型押し印刷可能なプリンタブル-チタニアゲルの創製することである。 通常、我々は有機金属分解(MOD)法によってチタニア薄膜を作製してきたが、これらチタニアゲルの多くは熱変形時にパターン崩れる、もしくは変形性を全く示さなかった。本研究では、エチレングリコールと水を用いた新たなチタニアゲルが良好なパターニング性能を示すことを見出した。この優れたパターニング性能を示すチタニアゲル、ならびにパターニング性能を示さなかったチタニアゲルに対して、FT-IRによるゲルに含まれる有機配位子の状態の評価、TG-DTAによる残留有機物量の評価、そして、高エネルギーX線回折によるチタニアゲルの微細構造解析を行った。その結果、Ti-Oネットワークの成長が不十分な場合はチタニアゲルのパターンが崩れ、Ti-Oネットワークが過剰に成長した場合はプリンタブル性を示さないことが明らかとなった。優れたプリンタブル性には適度なTi-Oネットワーク成長が重要であることを見出した。プリンタブル-チタニアゲルを用いたパターン作製では、サブミクロンのラインアンドスペース、そして、新たにドットやホールの2次元構造パターンの作製に成功した。本研究によって、チタニアゲルの成形性に関わる新たな知見を得ることができた。酸化物プリンタブルゲルを創製する上での重要な材料設計方針を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、1μm以下のピッチサイズのゲルパターンの作製に成功している。これらプリンタブルチタニアゲルや、プリンタブル性を示さないチタニアゲルに対して、FT-IR、TG-DTA、高エネルギーX線回折による微細構造解析を進めた。今年度では、ナノインプリントによるラインパターンのみならず、ドットやホールパターンの2次元構造体の成形に成功した。これらの結果は査読付き論文誌にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によって、良好なプリンタブルチタニアゲルの調製に成功したが、未だパターン転写性や変形性は十分ではなかった。プリンタブルチタニアゲルの転写精度や変形性の向上を目指し、新たなチタニアゲルの創製を行う。本研究で見出した知見に加え、新たな有機配位子を用いるなどの検討を進める予定である。 引き続き、高エネルギーX線回折、熱分析やFT-IRによるチタニアゲルの構造解析を行い、さらに転写精度のよいプリンタブルチタニアゲルは、どのようなTi-Oネットワークや有機配位子の微細構造にするべきかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的なコロナ感染症の拡大によって、学会発表などに遅れが生じたため。 次年度では論文執筆ならびに学会参加費に関わる費用を予定している。
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