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2020 年度 実施状況報告書

完全無機ペロブスカイトナノ結晶蛍光体の光劣化と自己回復機能の探究

研究課題

研究課題/領域番号 20K15131
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

磯 由樹  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (00769705)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード蛍光体 / ナノ結晶 / 量子ドット / ペロブスカイト / 光劣化 / 自己回復 / ハロゲン / 光活性化
研究実績の概要

CsPbX3 (X = Cl, Br, I)ペロブスカイトナノ結晶(NCs)は、ハロゲン組成で蛍光波長を調整できる。先行研究で、励起光照射により光劣化したCsPbBr3 NCsが暗所で自己回復する現象を報告した。そこで本研究は、一部のBrをClおよびIに置換して光劣化と自己回復の挙動を調査した。
ホットインジェクション法でCsPbBr3 NCsの分散液を得た。ハロゲン組成変調はイオン交換法で行った。遠心分離と真空乾燥を行い、CsPb(Cl0.4Br0.6)3、CsPbBr3およびCsPb(Br0.7I0.3)3のペースト状NCs試料を得た。これを試料ホルダーに密封充填し、468 nmの青色LEDを72 h光照射した。その後、240 h暗所保管した。
X線回折法から、作製したNCsはいずれも立方晶であった。いずれの色も、青色光照射で黒色化した。その後の暗所保管中には元の色へ戻り、自己回復した。赤外吸収スペクトルの変化より、いずれのNCsも光照射中には表面配位子が光誘起脱離することで欠陥が生成し、その後の暗所保管中に再吸着したことが示唆された。表面欠陥の生成と減少が蛍光特性に影響したと推察される。また、蛍光量子収率(PLQY)の変化を比較した。CsPbBr3 NCs では、PLQYが光照射中に単調減少し、暗所保管中に単調増大した。Clを置換固溶すると、光照射中にPLQYが一時的に増大した後に減少した。暗所保管中には初期値以上まで回復した。これはClの高い電気陰性度に起因し、光照射中の表面配位子の吸着状態の最適化(光活性化)による影響が強く現れたと考えられる。一方、Iを置換固溶すると、光照射中にPLQYは単調減少した。しかし、暗所保管中の自己回復の程度はわずかであった。Iの置換固溶で立方晶としての安定性が低下し、非発光性の直方相への転移による不可逆な劣化が起こった可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

CsPbBr3 NCsを基点としたハロゲン組成の変調により、ClやIを置換固溶したNCsを作製し、それらの光劣化と自己回復について評価できた。それらの挙動のメカニズムに関する結果も得られており、おおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

各ハロゲン組成における光劣化と自己回復現象の違いについて探究を続ける。とくに十分に解明できていない挙動もあり、さらなる分析と考察を行う必要がある。また、これらがひと段落して目途が付き次第、もうひとつ計画していた自己回復速度の改善にも取り組む。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 その他

すべて 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] ハロゲン交換によるCsPbBr3ペロブスカイトナノ結晶の光劣化と自己回復への影響2020

    • 著者名/発表者名
      宮下聖規,磯由樹,磯部徹彦
    • 学会等名
      第81回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] CsPbBr3ペロブスカイトナノ結晶膜の自己回復機能の探究2020

    • 著者名/発表者名
      榎本郁弥,磯由樹,磯部徹彦
    • 学会等名
      第81回応用物理学会秋季学術講演会
  • [備考] 慶應義塾大学理工学部応用化学科機能材料デザイン研究室

    • URL

      https://www.applc.keio.ac.jp/~isobe/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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