研究実績の概要 |
グラフェンナノリボン(GNR)をデバイス応用するには、バンドギャップを持つ基板上に幅やエッジ構造及び配向を制御したGNRを作製することが必要となる。本研究では、半導体基板上に幅やエッジ構造及び配向を制御した長いGNRを作製する手法を確立することを目指した。基板として平行な単層ステップが周期的に並ぶGe(110)-16×2再構成構造を選択した。Ge(110)-16×2再構成構造は一般的にステップ方位が2種類存在するダブルドメイン構造だが、<110>方位に僅かに傾斜して研磨することでステップ方位を1つに限定することが可能であることを明らかにした。この上にGNRの前駆体分子である10,10'-Dibromo-9,9'-Bianthracene(DBBA)を蒸着すると秩序構造的に配列するが、分子の重合方向は基板再構成構造のステップと直交方向であるため長いGNRの合成に適さないことが示唆された。そこで、秩序構造を形成した前駆体分子と、そこから合成したGNRの方位や長さの関係を理解するためにAu単結晶上で拡散中のDBBA分子と秩序的な単分子層を形成したDBBA分子それぞれからGNRを合成した。この結果、長さは基板表面の結晶方位に依存するものの、合成前の秩序構造を維持した方位のGNRが密に合成できることが明らかになった。以上より、半導体基板上で長いグラフェンナノリボンを合成するためにはステップと前駆体分子の秩序構造の方位関係を制御することが重要であると考えられ、本研究の成果は今後のGNR合成手法を研究する上で重要な知見となる。
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