研究課題
本年度は、昨年度までに構築した正立型光ピンセットシステムを使用し、シナプス伝達において神経伝達物質を内包するため重要な役割を持つシナプス小胞の光捕捉と光捕捉に伴う神経活動変化を検証した。試料としてラット胎児海馬由来の培養神経細胞ネットワークのシナプス小胞を高カリウム濃度下でFM1-43を用いて蛍光染色し、可視化したものを使用した。シナプス小胞に光捕捉用の波長1064 nmレーザーを水浸対物レンズで照射すると、レーザー集光領域より二光子励起蛍光が観察された。レーザー光強度が低い条件では二光子励起蛍光強度が蛍光退色により減少するが、レーザー光強度が高い条件では蛍光強度が増加する傾向が見られたことから、高レーザー光強度条件では、シナプス小胞が光捕捉され集合したことを明らかにした。続いて、シナプス小胞光捕捉過程での神経ネットワーク活動を評価するため、光ピンセット顕微鏡システムに微小電極アレイによる細胞外電位多点計測を導入し、計測された細胞外電位を解析した。結果として、高強度のレーザー照射に伴い、レーザー照射前と比較してレーザー照射中に神経活動頻度が増加すること、相互相関解析によりレーザー照射前と比較してレーザー照射中およびレーザー照射後に神経細胞ネットワーク活動の同期性が高まることを見出した。現在、これらの結果をまとめた学術論文を投稿準備中である。以上の結果は、シナプス小胞の光捕捉に伴って、神経細胞ネットワークの時空間ダイナミクス制御を実証した結果であることが示唆された。今後、本手法を応用して神経細胞ネットワーク時空間ダイナミクスの可逆的操作への展開が期待される。
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Journal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews
巻: 53 ページ: 100554~100554
10.1016/j.jphotochemrev.2022.100554
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