研究課題/領域番号 |
20K15150
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
上杉 晃生 神戸大学, 工学研究科, 助教 (90821710)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シリコンナノワイヤ / 熱電発電 / コア/シェル半導体 / ナノ構造 / 集積化技術 |
研究実績の概要 |
高熱電変換効率を持つコアシェル(Core/shell)シリコンナノ細線(SiNWs)と、これを熱電素子とする発電モジュールの実現に向けて、令和3年度は、シリコンナノ細線を微小デバイス上に集積するためのボトムアップ結晶成長方位制御技術の継続開発と,この技術を使用して,Core/shellシリコンナノ細線の熱電特性を精度よく定量評価するための評価デバイスの設計・試作を実施した。またシェル層とするAl2O3薄膜への電荷注入法の開発もあわせて実施した。 前年度に見出した、VLS(Vapor-Liquid-Solid)シリコンナノ細線結晶成長法にMACE手法による表面ナノホール形成手法を組み合わせたナノ細線の結晶成長方位制御技術を発展させ、p型およびn型のシリコン{111}結晶面からのナノ細線の垂直成長への表面ナノホール性状の影響を明らかにした。また触媒とする金ナノ粒子の局所的なパターニング技術を組合わせ、シリコン基板上に形成した幅10マイクロメートルの微小な溝構造での、シリコンナノ細線の架橋構造の収率を大きく向上させることに成功した。配置粒子密度に対するシリコンナノ細線の架橋構造の密度は30%以上にまで向上し、この形成手法は、熱電特性をはじめとするシリコンナノ細線の物性評価デバイス作製のための集積化において有効な手法である。 また、シリコンナノ細線熱電特性の高精度な定量評価のため、微小な温度センサとヒーター構造を集積し,上述の架橋構造の集積手法とを組み合わせた熱電特性評価デバイスの開発・試作を行った。Al2O3絶縁シェル層を付与したコアシェル構造化したシリコンナノ細線架橋構造を有する評価デバイスの作製に成功し、真空下でナノ細線両端に所望の温度差を与えた熱起電力の評価に成功した。今後、シリコンナノ細線を被覆するシェル種類の影響、不純物添加状態の影響の評価を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シリコンナノ細線のボトムアップ結晶成長方位制御技術については予定していた以上の成果を得ることができており、これはシリコンナノ細線の物性評価デバイスの作製およびシリコンナノ細線熱電発電モジュールの作製に資するものである。また、シリコンナノ細線周囲のシェル層とするAl2O3薄膜に対する電荷注入方法の開発においては、紫外光による光電効果をもちいた電荷注入方法において適切なバイアス電圧を与えることで薄膜内の負の固定電荷密度を増加させうることをQSCV電気計測により実験的に評価した。一方で、シリコンナノ細線の熱電特性評価デバイスの開発においては、前年度にみられた作製と計測上の課題の解決を進めることで大きく進展させることができたが、いまだシリコンナノ細線の熱電特性評価は途上である。これら全体の状況の評価として、『やや遅れている』と評価する。令和3年度の評価デバイスの開発を継続し、シリコンナノ細線の熱電特性におよぼすシェル膜等の影響の評価を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に実施したシリコンナノ細線の熱電特性評価デバイスの試作において抽出された課題に対応し、また作製工程の一部の再検討を行うことで評価デバイスの試作期間の短縮をはかる。これによりシェル膜種類とナノ細線内の不純物添加状態がシリコンナノ細線の熱電特性に及ぼす影響の評価を早期に実施し、界面電子状態が及ぼす影響を明らかにする。またシリコンナノ細線集積発電モジュールの試作・評価については、令和3年度中に実施した発電モジュール設計と上記のシリコンナノ細線熱電特性を組合わせて試作し、その発電力の評価を実施する。
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