低環境負荷の高効率熱電発電素子の実現に向けて、シリコンナノワイヤ(SiNWs)の熱電変換性能の向上に資するため、誘電材料薄膜被覆によるコアシェル(C/S)構造化により引き起こされる界面電子状態が熱電変換性能に及ぼす影響を明らかにすることを目的に、本研究では、C/S SiNWsを一体化集積させた評価デバイスを開発してその熱電特性の評価を実施した。またこの研究の中で、所望の微小領域にSiNWsを垂直結晶成長させて集積する手法を開発し、また想定発電モジュールにおいてC/S構造化が熱伝導と発電密度に及ぼす影響を、モデル化による数値計算での分析を行った。 ナノスケール直径のSiNWsの結晶成長を特定の方位に集中させることは従来難しいとされてきたが、本研究ではVLS(Vapor Liquid Solid)機構でのSiNWs結晶成長法に、金属支援化学エッチング法による表面ナノホール形成を組み合せた垂直成長促進手法を提案し、適切な深さのナノホールが<111>方位垂直成長性を著しく向上させることを見出した。さらにこれを発展させて、Si基板上の微小溝構造内にナノワイヤを高収率で架橋集積することにもあわせて成功した。 C/S SiNWsの熱電特性評価デバイスはこの集積手法に対応させて、微小構造の計測に適するように薄膜ヒーターと温度センサを一体化した構造を開発した。負の固定電荷をもつアルミナ薄膜で被覆したC/S SiNWのゼーベック係数と、比抵抗から算出したみかけの不純物濃度の関係は、SiNWsと基板接合部での電圧降下を含むにも関わらず、従来報告のp型ナノスケールSi構造の傾向の延長上に位置した。これはC/S構造化がSiNWsの熱電特性を変調させてゼーベック係数を向上させうることを示唆するものである。今後、異なる不純物濃度のSiNWsに対してC/S構造化の影響評価を進め、熱電変換効率の向上を行う。
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