研究課題/領域番号 |
20K15151
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
亜力坤 亜夏爾 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (30735064)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガラスドーム構造 / 微細加工 / 立体加工 |
研究実績の概要 |
これまでの研究では、①ガラス基板上に浅い微小なくぼみを形成する、②カバーガラスを重ねて仮接合し閉じた微細空洞を作る、③吹きガラスの原理を利用して、周囲を真空引きしながら加熱することで空洞中の空気を膨張させる、④ゆっくり冷却するという手順により、設計した寸法通りにガラス微小ドーム構造を形成できることを実証した。 さらに、研究計画に記載された事項に関して、具体的に下記のような進捗を得ている。 1.加工条件によるガラスドーム構造形状変化を調査し、各パラメータと形状変化の関係性を明らかにした(学会論文業績1、学術論文業績6)。 2.加工プロセスの順番がガラスドーム構造形成に与える影響を明らかにした(学会論文業績1、学術論文業績6)。加熱温度・徐冷プロセスの時間分配などを明らかにした。 3.薄板板ガラスとドーム構造の応用開拓も行った。例えば、厚さ100マイクロメートル(μm、1μmは1,000分の1mm)~250μmのガラス板を用いて、直径30μm~1mmのさまざまな種類の微小ドーム構造を作製し、そのまま使えば凹レンズ(縮小レンズ)、充填液を導入すれば凸レンズ(拡大レンズ)の機能を持つことを示した。また、高温条件下や酸・有機溶媒中でもレンズ機能は失われず、ガラスの性質が保たれることを確認した。さらに、ドーム構造に生体試料を導入し、試料の360度全方位の観察に成功した(学術論文業績6)。 4.さらに、よりアスペクト比が高いと壁の肉厚が薄いガラスドーム構造を実現するために、より薄い板ガラスを使用する必要がある。しかし、研磨を始めとする既存手法では、十数マイクロの板ガラスの作製は長時間を要する以上、ハンドリングなど困難である。そこで、本項目では、片方が固定された厚い板ガラスに熱と重りを加え、もう片方をゆっくり延ばして数マイクロまで薄い板ガラスの作製に成功した(学術論文業績5)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響により、石英ガラスドーム構造形成のための高温ガス雰囲気電気炉の納品が大幅に遅れていたので、一部の実験が実施できなかった。代わりに、低温炉で実行可能な実験と調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、高温ガス雰囲気電気炉を用いて下記の研究事項を行う。 1.ガラス材料物性の選定によるドーム構造の特性への影響を明らかにする。 使用される応用により、様々なガラス材料または違う厚みが採用されると想定できる。この場合、ガラス材料の厚み、材料(石英ガラス)もドーム構造の形成特性、化学と物理特性を影響するため、複数条件の組み合わせでのドーム構造形成実験を行い、その違いを定量化し、関係性を明らかにする。 2.チャンバー形状によるガラスドーム構造の形状制御の可能性を調査する。 チャンバーの深さ、形状により、ドーム構造の高さ、形成形状の制御も可能だと思われる。 3.企業と一緒に量産の可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.2020年のコロナの影響で購入したい装置の製造と発送が大幅に遅れて、納品が翌年度になったため、次年度使用額が生じる。 2.コロナの影響で国際学会が中止され、旅費は使用できなくなった。次年度の学会を参加するため、次年度使用額が生じる。 3.コロナの影響で、アルバイトの雇用または実験など業務の実行が困難になり、計画していた実験の実施は来年度に実施することにしたため、次年度使用額が生じる。
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