研究課題
最終年度となる2022年度は、細胞の収縮力の計測に加え、細胞を播種した際の接着面の状態変化を表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance ; SPR)により観察した。細胞の収縮力については、よりダイナミックな運動を観察するために、ヒトiPS細胞から分化させた心筋細胞を用いて、その拍動力を計測した。培地の温度を20℃から40℃まで変化させ、拍動力を計測したところ、高温になるほど拍動周波数が高くなり、両者の間には高い線形性があることがわかった。得られた拍動のデータを統計的に解析したところ、拍動周波数の温度係数は細胞群ごとに大きくばらつく一方で、拍動が停止する温度は20.7±2.7℃と概ね一定であることを見出した。細胞接着面のSPR計測では、マウスの筋芽細胞(C2C12)を用いた。シリコンウエハの表面に金の薄膜をコーティングし、裏面から赤外レーザー(波長1.55um)を照射して金薄膜中にSPRを励起させた。具体的には、金薄膜が水と接しているときにSPRが励起されるように、赤外レーザーの入射角を固定した。その状態で金薄膜表面に水を注いだところ、SPR信号(電流)は一定の値を保った。これに対してC2C12の懸濁液を注いだところ、10分程度かけてSPR信号が減少し続けた。細胞が金薄膜との間に接着班を形成することによって、金表面近傍の平均屈折率が増大し、これに応じてSPR信号が低下したものと推測される。研究期間全体としては、SPRの励起を電流として検出できるセットアップを構築し、入射角固定でSPRの励起の度合いを計測できるようにした。その上で、細胞に対する収縮力の計測や細胞接着のSPRによる観察を行った。SPRの計測結果は、水の場合と細胞懸濁液の場合とで明らかに異なり、細胞接着を捉えているものと推測される。
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Sensors
巻: 23 ページ: 3370
10.3390/s23073370