研究課題/領域番号 |
20K15154
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柴田 陽生 東北大学, 工学研究科, 助教 (70771880)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 液晶 / ゲル / ヘテロ接合 / 分子配向 / 二色性色素 |
研究実績の概要 |
本研究は、可視光の遮光・散乱・透過という3つの状態を電圧でスイッチング可能な調光デバイスに向け、二色性色素ドープ型の液晶ゲル膜と、分子配向制御型の液晶ゲル膜の接合化を目的としている。薄型の液晶ゲル膜をダイレクトに接合することで、薄型かつ優れた柔軟性が期待できる。本目的の達成に向け、令和2年度は以下の2点を中心に検討を行った。 1. 液晶ゲル中の液晶分子の配向制御 液晶をゲル化する自己組織化デンドリマーが液晶中で無秩序に存在すると、液晶に対する強い配向規制力によって、液晶の配向制御を困難にする。このため、自己組織化デンドリマーの添加濃度を制御することによって、液晶分子の配向制御が可能となることを明らかにした。 2. 液晶ゲル膜の基板剥離技術の確立 液晶ゲルの厚みを精密に制御するためには、2枚の基板間に形成した液晶ゲル膜から基板を剥離する手法が妥当と考え、それらのプロセス制御を検討した。しかし、剥離試験の過程において、流動性を失ったゲル化液晶と流動性を示す液晶単体の領域が、互いに分離した構造が形成されていることが確認された。このため、まずは面均一な液晶ゲル形成のための作製プロセスの検討に重きを置き、特にゾル状態からゲル状態への転移を決定する温度に着目した。その結果、徐冷およびネマチック相が保たれる温度領域における温度保持制御を経ることで、基板面内各所における光学特性の分散を抑制する液晶ゲル膜の作製指針を見出すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度の目標は、液晶ゲルのヘテロ接合化を行う前段階として、シリコンまたはフッ素系の離型剤を検討しながら、2枚の基板間に形成した薄型の液晶ゲル膜を基板から剥離する技術を確立することであった。しかしながら剥離過程において、液晶の固体化が十分に進行しない領域が液晶ゲル中に存在することが明らかとなり、面均一な液晶のゲル化(固体化)を行うためのプロセス制御指針を明確化することに絞って検討を行った。このため、目標に対する進展はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究計画では、液晶ゲルのヘテロ接合化技術の確立およびマルチ調光機能を電圧駆動で実証することを掲げている。研究の進捗にやや遅れが生じていることから、令和3年度の前半において、令和2年度末までに確立した面均一な液晶ゲル膜の作製指針をベースとしながら、液晶ゲル膜の作製条件を最適化し、基板剥離の工程を経ることでヘテロ接合化の実証を加速させる。令和3年度の後半では、電気光学特性や駆動電圧を最適化するための膜厚分布設計を中心に検討し、フレキシブルな調光素子として展開するための基本技術を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請課題に関連する情報収集を行うための学会参加および旅費の計上をしていたが、新型コロナウィルスの影響により、オンラインによる参加や議論を行うことで研究計画を遂行せざるを得ない事情があり、旅費の使用が当初の計画よりも少なくなった。液晶ゲル膜の作製条件を最適化するために用いる材料購入費がかかるため、次年度使用額は主に本用途に充てながら研究を加速させる。
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