研究課題
スピン波(マグノン)を情報の処理、記憶、伝送などに用いる技術が提案されており、このような応用を目指した研究分野は「マグノニクス」として近年注目を集めている。本研究では、層間交換結合を有する人工反強磁性体中を伝搬する反強磁性スピン波の制御を目指して研究を行う。反強磁性体は、スピンが揃った強磁性体とは異なりスピンが互いに逆向きに結合している材料である。この反強磁性的に結合したスピンのダイナミクスを利用すれば、従来の強磁性体を用いたデバイスには無かった新たな自由度を追加する事ができる。そこで、本研究では多機能なスピン波論理演算素子に向けて、人工反強磁性体におけるスピン波伝搬の様々な物理現象を探索し、反強磁性スピン波を利用したマグノニクス応用への展開を目指す。本年度は、昨年度までに立ち上げた光ヘテロダイン検波法を用いた磁化ダイナミクスの空間分布を測定できる測定系を用いて、スピントルク強磁性共鳴法で一般に用いられる構造を用いて磁性細線中の磁化ダイナミクスの空間分布の測定に成功した。従来の電気的な測定法では磁性細線の平均の情報しか得られなかったが、光による局所的な測定により、磁気異方性・ダンピング定数の非均一性を直接測定することが可能になった。またこれまでは面内磁化の人工反強磁性体のスピン波伝搬の測定を行っていたが、垂直磁化の人工反強磁性体を用いてもスピン波共鳴測定を行った。その結果、二つの共鳴モードの観測に成功し、それぞれは右回り・左回りの共鳴モードであることを理論的に検証した。これらの共鳴モードを用いれば、スピン波偏光という新たな自由度を追加することが可能になると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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