研究課題
若手研究
本研究では、層間交換結合を有する人工反強磁性体中を伝搬する反強磁性スピン波の制御を目指して研究に取り組んだ。主要な成果として、面内磁化の人工反強磁性体中において反強磁性共鳴モードの強い相互作用(共鳴周波数の反交差)が観測され、この現象がスピン波の動的双極子相互作用に起因することを明らかにした。垂直磁化の人工反強磁性体においては、二つの共鳴モードの観測に成功し、それぞれが右回り・左回りの反強磁性共鳴モードであることを明らかにした。また
スピントロニクス
スピン波(マグノン)を情報の処理、記憶、伝送などに用いる様々な技術が提案されており、このような応用を目指した研究分野は「マグノニクス」として近年注目を集めている。本研究によって明らかになった反強磁性共鳴モードの強い相互作用は、量子情報処理を目指して研究が進められているハイブリッド量子系に新しい視点を与え、スピン波を利用した新たな情報処理技術の開拓につながることが期待される。また回転方向の異なる共鳴モードを有する垂直磁化の人工反強磁性体はスピン波偏光という新たな自由度追加の可能性を示した。