研究実績の概要 |
最終年度に実施した研究の成果: S4対称性の結晶構造を持つアンチスキルミオン物質(Fe,Ni,Pd)3Pにおいて、2020年度に磁気力顕微鏡により複雑に枝分かれしたフラクタル磁区構造を観測した。2021年度にはスイスPSIとの共同研究により小角中性子散乱を行い、[110]と[-110]方向の磁気散漫散乱の波数q依存性が、べき関数I∝q^(-3.1)に従うことが分かった。この結果により、磁壁が表面フラクタル次元2.9で特徴づけられるフラクタル構造を形成することが明らかとなった。また、高いq領域でブロードな肩構造が観測され、磁場・温度依存性を調べた結果、磁区内の磁化の不均一性に由来することが分かった。最終年度は中性子散乱強度の積算範囲やフィッティング範囲を再検討するなど解析を行い、結果を論文にまとめた。本研究成果はJournal of Applied Crystallographyに掲載された。
研究期間全体を通じて実施した研究の成果: 本研究では、室温トポロジカル磁性体の物質開拓、物性解明を行った。まず、Co-Zn-Mn合金における頑強な準安定スキルミオン状態やスキルミオン格子の構造変化には、磁気異方性と、Mnスピンのフラストレート反強磁性相関がCoスピンに与える磁気的な乱れが重要であることを明らかにした。また、S4対称性を持つ新規室温アンチスキルミオン物質(Fe,Ni,Pd)3Pを発見し、アンチスキルミオンの安定性には容易軸型の磁気異方性と反磁場エネルギーの競合が重要であることを明らかにした。また、バルク単結晶においてノコギリ型およびフラクタルな構造を持つ磁区パターンが発現することを発見した。
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