研究実績の概要 |
令和3年度も令和2年度に引き続き,二酸化炭素の高効率な再資源化を実現する長寿命な脱貴金属触媒の開発に向け,長寿命な単原子金属触媒と触媒担体の組み合わせを密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算を用いて調査した. 本年度は,触媒担体として軽元素置換グラフェンに着目した.置換元素としてB, N, O, Si, P, Sを取り扱った.触媒金属としてCu, Ptを取り扱った.まず,グラフェン格子中に導入した置換元素により,触媒金属単原子が清浄グラフェンの場合よりも安定に吸着するということを明らかにした.この時,活性の異なるPt原子とCu原子では最安定吸着構造が異なることも明らかにした.また,触媒金属に雰囲気ガスを模した様々な原子や分子が吸着した場合の触媒金属の安定性も調査した.その結果,立体構造を有する軽元素置換グラフェンは雰囲気ガスが吸着した場合でも長寿命であることを明らかにした. 次に,触媒活性を評価するため,ギ酸の構成要素であるCOとOHの吸着エネルギーを調査した.その結果,昨年度に取り扱ったMXeneと同様に,軽元素置換グラフェン上での安定性が低い触媒金属ほど,COやOHの吸着エネルギーも大きいことが明らかとなった.得られた吸着エネルギーはバルク金属触媒のものよりも大きなものであった.COやOHの吸着エネルギーと触媒活性の関係を示したボルケーノプロットとの比較から,本研究で取り扱った触媒はCOやOHの吸着エネルギーが過大なため,触媒活性はそれほど高くないということが示唆された.この触媒活性の傾向も,昨年度に取り扱ったMXeneと同様であった.そのため,MXeneと同様に,今後はよりCOやOHの吸着エネルギーを小さくする組み合わせを探索していく.また,銅ナノ粒子触媒の生成メカニズムに関する研究も行った. これらの成果を1報の査読付き学術論文,3件の国内会議にて発表した.
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