令和4年度も前年度までに引き続き,二酸化炭素の高効率な再資源化を実現する長寿命な脱貴金属触媒の開発に向け,長寿命な単原子金属触媒と触媒担体の組み合わせ,およびその触媒活性を密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算を用いて調査した. 本年度は,触媒担体として金属基板に担持した軽元素置換グラフェンを取り扱った.まず,清浄グラフェンを金属基板に担持することにより,触媒金属単原子がフリースタンディング清浄グラフェン上よりも安定に吸着するということを明らかにした.また,金属基板への担持の効果は置換元素に依存して変化することも明らかにした.さらに,触媒金属が湿潤環境にある場合の触媒金属の安定性も調査した.その結果,立体構造を有する軽元素置換グラフェン担体は湿潤環境においても触媒金属の拡散を抑制し,長寿命であることを明らかにした. 次に,触媒活性を評価するため,前年度と同様にギ酸の構成要素であるCOとOHの吸着エネルギーを調査した.その結果,金属基板への担持の影響は,置換元素に依存して非常に複雑であることを明らかにした.多くの系において,金属基板への担持により,COやOHの吸着エネルギーが大きくなり安定化することが明らかとなった.得られたCOやOHの吸着エネルギーと触媒活性の関係を示したボルケーノプロットとの比較から,本研究で取り扱った触媒はCOやOHの吸着エネルギーが過大なため,触媒活性はバルク金属触媒ほど高くないということが示唆された.一方で,いくつかの金属基板と軽元素置換の組み合わせにおいては,反応選択性がバルク金属触媒よりも向上することが明らかとなり,単原子触媒化にともなう比表面積の増加を考慮すると,有望な触媒材料の候補を同定することができた. これらの成果を1報の査読付き学術論文,2件の国内会議,および1件の国際会議にて発表した.
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