本研究課題では、歪んだペロブスカイト型構造の化合物ではバンド構造の折り返しをはじめとする光特性に有利な電子構造が実現しやすいことに着目し、ペロブスカイト型構造を有する非酸化物半導体材料を用いた高効率な光デバイスの創製を目指してきた。高効率デバイスを実現するためには、高品質なエピタキシャル薄膜の作製が必要不可欠となる。そこで今年度は、これまで研究対象としてきたSrHfS3のエピタキシャル薄膜の高品質化とペロブスカイト型窒化物のエピタキシャル薄膜の作製を行った。パルスレーザー堆積法を用いて高品質化したSrHfS3エピタキシャル薄膜の光学特性を評価したところ、期待された高効率な発光・吸光特性は得られなかった。一方、ペロブスカイト型窒化物では、強誘電体太陽電池材料として期待されるLaWN3に着目して、エピタキシャル薄膜の作製を試みた。LaとWの蒸気圧が非常に低いことから、薄膜成長には窒素ガスを用いた反応性RFマグネトロンスパッタ法を用いた。成長条件を最適化することで得られたLaWN3エピタキシャル薄膜の光・電気特性を調べたところ、多くのキャリアを含む縮退半導体となっていることが明らかになった。キャリア制御性が今後の課題ではあるものの、強誘電体太陽電池デバイスは積層構造がシンプルであるため、エピタキシャル薄膜が作製できたことは重要な進歩と言える。
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