現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まずビスマス置換の影響を調べるために、スズに置換するビスマスの仕込み組成を5%, 10%, 15%, 20%, 40%, 60%と変化させた粉末試料を合成し、特性を評価した。まず合成後の結晶相をX線回折法により同定した。その結果、いずれの試料でもマンガン系窒化物の結晶構造を持つ結晶相に加えて、ビスマス金属の結晶相が観測された。しかし、窒化物相の格子定数を調べたところ、ビスマス仕込み組成の増加に従って、一定の変化を示すことが分かった。また、各仕込み組成の試料について磁化を測定したところ、仕込み組成の異なる試料では異なる温度依存性を示した。また、10%から20%の試料でワイル反強磁性を示唆する特徴的な形状を有する磁化曲線が得られた。一方、5%, 40%, 60%の試料において磁気転移温度以下での磁化曲線は通常の強磁性的な形状を示した。 以上のことから、窒化物相へのビスマス置換は少なくとも部分的には成功していると考えられる。そこで、より詳細な解析を行ったところ、窒化物相への実際のビスマス置換量は、それぞれの試料で仕込み組成のおよそ半分程度であることが示唆された。単相化が難しい理由として、合成過程でビスマスが比較的低温で融解してしまい合成温度(800℃)では既に分布が偏ってしまっていること、ビスマスの窒化物相中の拡散速度が遅い可能性があることなどが挙げられる。 また、性能解明のために結晶方位のそろった試料を作製すべく、パルスレーザー堆積法を用いて薄膜作製に取り組んだ。結晶化の条件を調べるために、酸化マグネシウム単結晶基板上へのビスマス置換なしのMn3SnNの薄膜作製を試みた。予想と異なり成膜中の磁場印加を必要とせず、500℃での作製において、窒化物単相の薄膜を得ることに成功した。詳細な解析の結果、窒化物相の結晶方位は3次元的にそろっており、いわゆるエピタキシャル薄膜であることが明らかとなった。
|