本研究では、透過電子顕微鏡の電子源として使用される熱電子銃、電界放出電子銃、およびフォトカソードについて、電子ビームのコヒーレンスを定量評価と、フォトカソードを用いた位相イメージングの実現を目指した。研究は2つの項目 (1) 電子ビームのコヒーレンス評価と電子源比較、(2) フォトカソードを備えた超高速電子顕微鏡の開発と応用、について実施した。 (1) 昨年度までに、熱電子銃および電界放出電子銃についてビームコヒーレンスの定量評価を実現した。最終年度は、前年度進めていた、コヒーレンス測定に基づいた波動光学的な輝度算出と電子源の比較について、他の手法との比較を実施した。従来の幾何光学的手法や電子線バイプリズムによる手法に対する優位性を検討し、これらの結果で論文の執筆を進めた。 (2) 昨年度までに、超高速電子顕微鏡を開発し、光誘起相転移材料である五酸化チタンについて、電子回折による時間分解観察を実証した。最終年度は、実験結果の考察のため、第一原理計算により五酸化チタンの状態密度および実空間の価電子の電荷密度を求めた。この計算結果に基づいて、実験結果に対する理論的考察を進め、特定の結合軌道の解離が光誘起相転移のトリガーとして重要であることを明らかにした。実験結果と理論計算による考察を合わせて論文の執筆を進めた。また、超高速電子顕微鏡での時間分解位相イメージングにむけて、半導体フォトカソードから生成した光電子ビームのコヒーレンス測定を実施した。現在、結果の解析を進めている。
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