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2021 年度 実施状況報告書

単分子の電気伝導率と剛性の同時計測に向けたSTM/熱振動AFM複合機の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K15175
研究機関横浜市立大学

研究代表者

大江 弘晃  横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 助教 (20793194)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード熱振動スペクトル / 原子間力顕微鏡 / 走査トンネル顕微鏡
研究実績の概要

本研究では、固体表面の単原子/単分子の複合的な特性(例えば、金属表面に吸着した分子ワイヤーの電気伝導率、剛性、伸縮性の相関特性)の解明を目的に、「走査トンネル顕微鏡(STM)」と「熱振動で力を計測する原子間力顕微鏡(熱振動AFM)」を組み合わせた複合型走査プローブ顕微鏡を開発する。
2021年度は、大気環境で動作する走査プローブ顕微鏡を構築し、位相同期機能を実装したロックインアンプと走査トンネル顕微鏡用コントローラを組み合わせた原子間力顕微鏡/走査トンネルトンネル顕微鏡の複合計測を開始した。AFM力センサーには、大気環境での表面酸化に強い白金イリジウム探針を取り付けたqPlusセンサー(音叉型水晶振動子を応用したAFM力センサー)を使用して、観察試料には、二次元積層グラフェン(HOPG)、金蒸着マイカ、イオン性結晶KBrの固体気体界面を観察し、0.3nm程度の原子高さステップテラス構造を無制御大気環境でも安定に観察できる状況まで装置開発を進めた。
従来の原子間力顕微鏡計測を行うだけでなく、熱振動を利用した力(特に引力相互作用)検出の可否について研究を進めた。具体的には、導電性探針と導電性試料を用いて、探針試料間距離をトンネル電流値で制御し、探針試料間力学的相互作用として静電気力を変化させ、力とAFM力センサーの熱振動応答の関係を解析した。さらに、熱振動を利用して検出した信号と探針試料間力学的相互作用の関係を明らかにするために、近い条件で周波数変調法を用いて取得したデータとの比較を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で開発した計測装置を利用することで、探針試料間の力学的相互作用をAFM力センサーの熱振動スペクトルの形状変化として検出可能であることが明らかをした。さらに、熱振動スペクトルの形状と振動エネルギーの関係から、探針試料間力学的相互作用を通して移動するエネルギー量についても検知できる可能性を見いだした。また、同装置を周波数変調原子間力顕微鏡モードで動作させた計測との比較から、熱振動スペクトルを利用して検出した信号と力学的相互作用の関係は、周波数変調原子間力顕微鏡の周波数シフトと力の関係に類似することを明らかにした。以上の点から、本研究の進捗状況は、予定通り「おおむね順調に進行している」といえる。

今後の研究の推進方策

熱振動計測に利用するロックインアンプの時定数の問題で、熱振動を利用した力計測の高速化は困難であることが予想できる。そのため走査プローブ顕微鏡のサブチャネルとしての発展を目指した自動計測プログラムの開発、または他の分光計測との複合化に取り組む予定である。

次年度使用額が生じた理由

21年度には、装置開発に際して、研究計画と必要に応じて顕微鏡用パーツ(1~10万円)・実験用ハードウェア(10~30万円)・除振機構(1~5万円)・観察サンプル(1~5万円)・その他消耗品(1~2万円)を購入した。2021年3月時点で2826円の残額が生じた。未使用予算は少額で、装置備品や観察サンプルの追加購入、学会参加費などには不足するため、来年度の補助金と合算して利用することにした。
22年度は、開発装置を使用して新たなサンプルの表面構造観察に取り組む。そのため、21年度の残額2826円は、22年度に観察サンプルの購入経費の一部として利用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] qPlusセンサーの熱振動を利用した力計測2022

    • 著者名/発表者名
      大江弘晃
    • 学会等名
      第68回春季応用物理学会学術講演会
  • [学会発表] STMに組み込んだqPlusセンサーの熱振動を利用した力計測の検討2021

    • 著者名/発表者名
      大江弘晃
    • 学会等名
      第82回秋季応用物理学会学術講演会

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公開日: 2022-12-28  

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