令和4年度は「光リザーバの情報処理能力の向上可能性」について着目し,研究を行った.具体的には,「光リザーバの並列化および深層化」を行った. 時間遅延レーザシステムを用いた光リザーバは,フィードバック遅延時間を長くすることでノード数を増やすことができる.これは情報処理性能を向上させるが,一方で情報処理速度を低下させてしまうトレードオフがある.このような問題を避けるために,光リザーバの並列化と深層化による情報処理性能の向上可能性について調査した.単一,並列,深層のそれぞれのリザーバと並列と深層を組み合わせたハイブリッドリザーバについていくつかのベンチマークタスクで性能比較したところ,ハイブリッドにすることで最も高い性能が得られることが分かった.本研究成果をまとめたものは国際論文誌「Nanophotonics」で出版済みである. さらに並列化という観点において,光の空間分布を用いることは非常に有効であると考えられる.この考えに基づき,空間光変調器を用いたフィードバックシステムを構築し,機械学習に利用する手法を提案した.この手法がリザーバコンピューティングだけでなく,多腕バンディット問題のための強化学習アルゴリズムの実装に有効であることを示した.本研究成果は国際論文誌 Scientific Reports および Optica で発表済みである. また研究計画に予定されていない内容であるが,時間遅延レーザシステムを用いた物理深層学習の実験実装にも取り組んだ.これは最適制御理論を用いてシステムの制御信号を学習し,システムの出力から入力データの分類を行う手法である.光リザーバコンピューティングが出力部のみを学習するのに対して,本手法は制御信号も学習するためより高度な問題に適用できる可能性がある.この研究成果は,国際学会NOLTA2022で発表済みである.
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